[II-P60-01] 心房中隔欠損症の心電図におけるT波所見の検討
キーワード:ASD, electrocardiogram, T wave
【背景】心房中隔欠損症(ASD)における特徴的な心電図所見には孤立性陰性T波(iNT)に代表されるT波所見の変化があり, T波の非連続性とともに疾患特異性が高いと考えられるが, ASDのT波所見を詳細に検討した報告は少ない.【目的】ASD患者の心電図において, iNTを含むV3,V4誘導における特徴的T波所見(Unnatural T wave)と, T波の非連続性, Defective T wave(DTW)の各項目について, Qp/Qsとの関連や所見の陽性率を検討すること.【対象と方法】2010年1月から2019年1月までの9年間で当院および愛媛大学医学部付属病院において経皮的閉鎖術もしくは外科的手術を受けた, 18歳までの小児ASD症例175例(年齢:6か月~18歳, 平均8.5±5.2歳, 男:女=83:92)において, 各心電図所見の陽性率について診療録を用いて後方視的に検討し, 正常群225例(年齢:6か月~18歳, 平均7.8±3.9歳, 男:女=110:115)と比較した.【結果】ASD症例を年齢でA1群:6歳未満, A2群:6-18歳に, Qp/QsでB1群:Qp/Qs≧1.5, B2群:Qp/Qs<1.5に分けた. 正常群をC1群:6歳未満, C2群:6-18歳とした. A1, A2, B1, B2, C1, C2群における所見の陽性率は, Unnatural T waveで78.8%, 51.2%, 61.7%, 46.1%, 10.9%, 1.7%, T波の非連続性で84.6%, 57.7%, 69.1%, 46.2%, 0%, 2.8%, DTWで88.5%, 67.5%, 75.2%, 65.4%, 26.0%, 10.1%であった. また, T波所見, 右軸偏位, 不完全右脚ブロック, crochetageのいずれか2つ以上の所見陽性となる場合の陽性率は94.2%, 66.7%, 82.6%, 61.5%, 2.2%, 4.5%であった. Unnatural T waveはA2群で特異度99.4%, T波の非連続性はA1, A2群とも特異度100%であった. T波以外の所見と併せて2つ以上陽性となる場合の感度/特異度はA1, A2群で94.2%/97.8%, 73.2%/94.4%であった. 【考察】ASDにおいて, Unnnatural T waveやT波の非連続性は特異度が高く, DTWは感度が高い. T波以外の所見と組み合わせることでさらに診断精度を上げることができる.