[II-P60-03] ASDの診断時症状に関する検討および診断における心電図異常所見の評価
キーワード:心房中隔欠損症, 心電図, 学校検診
背景:心房中隔欠損症(ASD)は幼少期には無症状で経過することが多く、成人期に症候化することがあるが、これらの実際の発生頻度に関しての報告は少ない。学校心臓病検診における診断精度が十分であれば成人発症は抑制されうると想定される。しかし、成人発症も少なからず見られることから、実際には心電図による判定が十分な精度を担保できていない可能性がある。この一員としてASDに関連した心電図状異常所見の検者間一致性に関して検討が十分になされていない点が挙げられる。目的:ASD診断時の契機を調査し、学校心臓病検診における心電図の意義を検討すること。心電図状異常所見の検者間一致性を評価すること。検討1:過去5年間で入院したASDの251名の診断時年齢と診断契機を収集した。結果1:診断時年齢は未就学児101名、就学時55名、成人97名。有症状の割合は未就学児4%、就学時10%、成人61% (p<0.01)。診断契機として多いのは未就学児で心雑音(84%)、就学年齢で心電図異常(58%)であった。成人の発症時症状は胸痛6%、肺高血圧7%、奇異性梗塞10%、易疲労22%、不整脈35%であった。検討2:ASDで見られる心電図異常所見 rsR’、isolated invert T、Chrochetageに関して出現頻度と検者間一致性を就学年齢ASD患者の心電図を用いて3名の小児循環器医によりCohen’s Kappaを用いて評価した。結果2:rsR‘ 37-42%、κ=0.75(p<0.01)、isolated invert T 10-12%、κ=0.49(p<0.01)、Chrochetage 27-50%κ=0.45(p<0.01)であった。考察:就学年齢では心電図での指摘が多く、学校心臓病検診の有用性が伺える。しかし、心電図でのASDに関連した異常所見はV1誘導におけるrsR’以外では検出率は高くなくかつ検者間一致性も低いことが明らかとなった。学校検診の精度向上が成人期有症状での発症の抑制につながると考えられる。結論: 学校検診の心電図診断は一定の役割は果たしているものの、診断精度にはいまだ問題がある