[II-P62-02] 移植前心筋病理検体の持つ可能性
キーワード:心移植, 心筋生検, 細胞浸潤
背景)2010年の臓器の移植に関する法改正により小児心臓移植の実施件数が増加している中、移植登録の際には心筋生検が明らかな虚血性心疾患を除いて必須とされている。しかし小児におけるカテーテル心筋生検は手技上の多大なリスクを伴い、かつ心筋生検によって得られる情報の信頼性・有用性は常に議論となっている。また、小児領域に限定して移植前の心筋病理所見と心臓移植に伴い摘出されたレシピエント心の病理標本とを比較した研究はこれまで存在しない。目的方法)今回我々は2013年から2019年にかけて、当院で実施された心臓移植20歳以下15例のうち、移植前に心筋病理の検査を受けた12例(移植時年齢14.3±1.9歳、最小1.9歳、DCM12例)に対して、移植前心筋とレシピエント摘出心の病理所見の整合性について後方視的に検討した。心臓移植前に全例LVADを導入されており、左室心尖部を移植前サンプルとして用いた。評価項目は線維化・細胞浸潤・心筋細胞肥大・糖類蓄積・脂質蓄積の有無とした。また2例については右室心筋生検も施行されており、同一症例内での部位による所見の差異も検討した。結果)移植前心筋:線維化11/12例,細胞浸潤4/12例、心筋細胞肥大9/12例、糖類蓄積0/12例、脂質蓄積0/12例。摘出心:線維化11/12例,細胞浸潤2/12例、心筋細胞肥大9/12例、糖類蓄積0/12例、脂質蓄積0/12例。一致率:線維化100%,細胞浸潤50%、心筋細胞肥大83%、糖類蓄積100%、脂質蓄積100%。右室心筋は1例で左右心室の病理所見に差なし、もう1例では左右心室で異なる病理所見を得た。考察)移植前心筋病理は細胞浸潤を除けばほぼ正確に摘出心の所見と一致していた。細胞浸潤の出現率は低いものの、これを伴うDCMは予後不良との報告もあり、臨床的に非常に興味深い。移植前心筋と摘出心との違いはDCMの病勢やLVADの影響も考えられる。今後は免疫染色を行うなどより深く小児移植心における細胞浸潤の持つ意義の検討が望まれる。