[II-P62-04] 小児心臓移植後の骨粗しょう症と免疫抑制療法
キーワード:心臓移植, 免疫抑制療法, 骨密度
【背景】今日の心臓移植後免疫抑制療法はカルシニューリン阻害剤と核酸合成阻害剤の組み合わせを主としている。様々な移植後合併症の中には骨密度低下リスクも知られているが、日本における心臓移植後の骨密度低下についての報告はない。【方法】当センターに通院している心臓移植後症例について、治療歴、骨密度、ビタミンD活性を検討した。骨密度は二重X線吸収測定法で測定し、年齢基準値と比較した。【結果】骨密度を測定した症例は6例(女性3例)で、移植後経過時間は平均25か月(8か月~14年)、術後ステロイド使用期間は全例で3か月未満、免疫抑制剤は全例でタクロリムス内服中であった。骨折既往歴は1例、骨密度の年齢基準値を上回る症例はなかった(平均89%基準値)。ビタミンD活性について、異常値を示した例はなかった。【考察】小児の心移植後免疫抑制療法は、骨成長の観点からステロイドの早期離脱が心がけられているが、自験例においてはステロイド暴露期間が短くても全例で骨密度の低下が生じていた。ステロイド以外にも、カルシニューリン阻害剤、特にシクロスポリン使用下で骨密度の低下が起こることは知られているが、同様にタクロリムス使用下でも骨密度低下が起こる可能性がある。今後、移植後の骨密度測定を定期的に行い、症例を蓄積することが必要である。また、移植前の心不全においても骨密度が低下することが知られているが、少数例の検討では移植前の状況との関連までは検討不能であったが、この点についても今後の課題としたい。