[II-P66-02] 動脈スイッチ手術の遠隔期合併症を防ぐための工夫、肺動脈再建について
キーワード:ASO, PS, TGA
【目的】完全大血管転位症に対する動脈スイッチ手術(ASO)は成績の向上に伴い,肺動脈(PA)狭窄や大動脈弁閉鎖不全症(AR)などの遠隔期合併症が焦点になってきた。当院では,PA狭窄を防ぐべく2014年よりPA分岐部背側を垂直に切り上げ,冠動脈ボタン採取部に縫着した自己心膜頭側を山型にトリミングし分岐部背側に補填することでPA分岐部を長軸方向に延長するlongitudinal extension法(L法)を採用している。今回,当術式の中期成績を検討した。
【対象】1997年~2018年に当院でASOを施行した64例のうち,PA再建にLecompte法を用いた48例を対象とした。1997年~2014年の39例では従来術式を用い(C群),2014年~2018年の9例でL法を採用(L群)。手術時体重,日齢の中央値はC群/L群で3.0kg/3.1kg,26日/12日。C群では1例でPA絞扼術,1例で大動脈弓再建術を先行,37例で一期的根治術を施行。3例で大動脈弓再建,2例で右室流出路再建を併施。L群では1例で両側PA絞扼術を先行,8例で一期的根治術を施行。2例で大動脈弓再建,2例で肺動脈弁交連切開を併施。冠動脈移植については2001年以降bay-window法を基本術式とした。
【結果】観察期間の中央値はC群/L群で10.1年/1.3年。手術死亡はC群の1例(冠血流不全),遠隔死亡もC群の1例(感染)のみ。再手術はC群で8例,全例でPA狭窄に対しPA拡大形成を行なった(同時に大動脈基部拡大への介入が2例,ARへの介入が2例)。L群では大動脈狭窄に対する再建が1例のみでPAに対する再手術は現在認めていない。エコーによる左右PAの流速の中央値はC群,L群で左/右:2.3/2.1m/s,1.9/1.6m/sと有意差はないものの(p=0.09/0.07)L群で低値であった。
【結語】L法の中期成績は満足いくものであり,ASOの重篤な遠隔期合併症であるPA狭窄を防ぎうる新たな術式として有用であることが示唆された。しかし,まだ経過観察期間が短く今後の更なるフォローおよび血流解析等の新たな評価方法の検討が必要と考える。
【対象】1997年~2018年に当院でASOを施行した64例のうち,PA再建にLecompte法を用いた48例を対象とした。1997年~2014年の39例では従来術式を用い(C群),2014年~2018年の9例でL法を採用(L群)。手術時体重,日齢の中央値はC群/L群で3.0kg/3.1kg,26日/12日。C群では1例でPA絞扼術,1例で大動脈弓再建術を先行,37例で一期的根治術を施行。3例で大動脈弓再建,2例で右室流出路再建を併施。L群では1例で両側PA絞扼術を先行,8例で一期的根治術を施行。2例で大動脈弓再建,2例で肺動脈弁交連切開を併施。冠動脈移植については2001年以降bay-window法を基本術式とした。
【結果】観察期間の中央値はC群/L群で10.1年/1.3年。手術死亡はC群の1例(冠血流不全),遠隔死亡もC群の1例(感染)のみ。再手術はC群で8例,全例でPA狭窄に対しPA拡大形成を行なった(同時に大動脈基部拡大への介入が2例,ARへの介入が2例)。L群では大動脈狭窄に対する再建が1例のみでPAに対する再手術は現在認めていない。エコーによる左右PAの流速の中央値はC群,L群で左/右:2.3/2.1m/s,1.9/1.6m/sと有意差はないものの(p=0.09/0.07)L群で低値であった。
【結語】L法の中期成績は満足いくものであり,ASOの重篤な遠隔期合併症であるPA狭窄を防ぎうる新たな術式として有用であることが示唆された。しかし,まだ経過観察期間が短く今後の更なるフォローおよび血流解析等の新たな評価方法の検討が必要と考える。