第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ミニシンポジウム(多領域専門職部門)

ミニシンポジウム(多領域専門職部門)(II-TRMS)
先天性心疾患患者のリプロダクティブヘルス/ライツを考える

Fri. Jun 28, 2019 5:00 PM - 6:00 PM 第3会場 (大ホールC)

座長:堀内 縁(国立循環器病研究センター 周産期・婦人科)
座長:水野 芳子(東京情報大学 看護学部)

[II-TRMS-02] 小児医療施設での先天性心疾患患者のリプロダクティブヘルスへのかかわりと課題

中島 弘道 (千葉県こども病院 循環器内科)

Keywords:リプロダクティブヘルス, 小児医療施設, 妊娠出産

リプロダクティブヘルスとは「性と生殖に関する健康」といえるが、単に生殖に留まらず、それに関連した生き方、環境、社会、制度、法律などの問題も包含されている。今回先天性心疾患(CHD)患者に関して小児医療施設としての当院でのかかわりと課題について検討する。
CHD患者の妊娠、出産に関してはガイドラインが作成されており、母体合併症として心不全、不整脈、血栓症、出血、高血圧、大動脈解離、チアノーゼ増悪、感染性心内膜炎などの問題が知られている。
CHD患者の成人期移行に向け当院でも疾患教育に加えて、運動生活、学業や進学、将来の就職に関する助言などを行っている。しかし妊娠出産に関する説明は後回しとなり、中学生以降に妊娠出産の可能性、危険性などに簡単に触れるに止まり具体的な教育はできていない。理由として時間的制約に加えて本人家族も学童期には現実感に乏しいこと、小児科医の多くが妊娠出産、それ以上に避妊に関する知識や具体的な助言の経験に乏しいことがある。
未成年や婚前の妊娠は増えつつあり、中絶率も15歳以下では85%に及んでいる現実がある。避妊指導や妊娠リスクの指導、中絶、さらには性病予防などの具体的指導は喫緊の課題である。当院でも成人期移行チームはスタートしたが、リプロダクティブヘルスに関しての議論は熟しておらず今後多職種での相談体制の構築が望まれる。
小児医療施設としての限界もあり、各地域に避妊も含めたカウンセリングを円滑に受けられるシステムやACHD患者の周産期管理施設が必要である。
出産後の育児支援までも考慮すれば昨年成立した成育基本法にも期待したい。これは母児ともども多方面多職種でのサポートを推進する法令であり、妊産婦に対する医療、子育て支援などの保健活動の推進、具体化、性教育、避妊教育と啓蒙等も含まれる。今後の医療計画策定に際し我々小児科医も積極的に関わることが求められる。