第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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会長要望演題

会長要望演題3(II-YB03)
新しい不整脈診断と治療

Fri. Jun 28, 2019 10:30 AM - 11:20 AM 第4会場 (中ホールA)

座長:堀米 仁志(筑波大学医学医療系 小児科)
座長:青木 寿明(大阪府立母子保健総合医療センター 小児循環器科)

[II-YB03-04] 右側副伝導路による拡張型心筋症に対し、フレカイニドが奏功した2乳児例

関根 麻衣1, 増谷 聡1,2, 今村 知彦2, 岩本 洋一1, 連 翔太2, 葭葉 茂樹2, 石戸 博隆1, 住友 直方2 (1.埼玉医科大学総合医療センター 小児科, 2.埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)

Keywords:Wolff-Parkinson-White症候群, 二次性拡張型心筋症, Naチャネル遮断薬

【背景】右側副伝導路を有するWolff-Parkinson-White症候群は、頻拍発作がなくても、心室非同期から心室中隔瘤や二次性拡張型心筋症(DCM)を呈し得る。副伝導路によるDCMに対し、カテーテルアブレーションやアミオダロンが奏功した報告が散見されるが、フレカイニドが有効であったという報告はみられない。本病態にフレカイニドが奏功した2乳児例を報告する。
【症例1】13か月男児。心雑音精査のため受診した。啼泣時のみ右心室流出路狭窄による収縮期駆出性雑音(LevineII/VI)を聴取した。啼泣時の心電図は心拍数192bpm、I, II, III, aVL, aVF, V4-V6で陽性のΔ波を認め, V1はrS型で、右前副伝導路と考えられた。心エコーでは、心室中隔基部が菲薄化した瘤状であり、心室非同期および心機能低下(EF 36%)を認めた。フレカイニド静脈内投与(2mg/kg)によりΔ波が消失したため、経口投与で維持し、その後、駆出率上昇(EF 49%)し、瘤や非同期の改善を認めた。
【症例2】5か月女児。哺乳不良と心雑音の精査のため受診した。心拍数は120bpmで、僧帽弁逆流による収縮期逆流性雑音(Levine II/VI)を聴取した。心電図は、I, II, III, aVL, V4-V6で陽性のΔ波を認め, V1はrS型で、右前副伝導路と考えられた。心エコーでは心室中隔基部が菲薄化した瘤状で、心室非同期と駆出率低下(EF 23.7%)を認めた。フレカイニド(0.8mg/kg)静脈内投与により、Δ波は消失し、内服で維持した。治療開始2週間後、瘤や非同期の改善傾向で、駆出率は上昇(EF 36.7%)した。
【考察】本病態の心機能低下は、副伝導路による電気的および機械的同期不全が主因と考えられる。乳児で薬物治療により副伝導路を抑制して非同期を改善できれば、カテーテルアブレーションが比較的安全に施行可能な年齢まで待機できる。重篤な副作用を生じにくいフレカイニドは、重症心不全のない乳児例では第一選択となりうる。