[III-OR37-02] 導出右側胸部誘導心電図を用いた肺高血圧症検出の有用性
Keywords:導出18誘導心電図, 肺高血圧症, 右室肥大
【背景】肺高血圧症(PH)は予後不良な疾患であるが、PHに対する様々な治療法が進歩し、早期に診断し適切な治療介入を行えば生命予後を改善することが可能になっている。しかし、PHを診断する上で、標準12誘導心電図の右室肥大所見は感度・特異度ともに高くないとされている。近年、標準12誘導心電図では捉えきれない右側誘導や背部誘導所見を、12誘導心電図波形から演算処理して導出する新技術が開発され、導出18誘導心電図として注目されている。そこで、この新技術から得られる右側胸部誘導(V3R-V5R)を用いて、PH検出の有用性について検討した。【方法】2013年以降に当科で心臓カテーテル検査を施行した学童期以上の患者の中から、肺動脈性肺高血圧と診断した8症例をPH群、年齢と性別をマッチさせたPHの無い川崎病冠動脈瘤の19症例を正常対照群とした。カテーテル検査の圧所見と、QRS電気軸やV1及び導出右側胸部誘導のR波高などの心電図所見との関連について比較・検討した。【結果】PH群の内訳は、年齢15歳(7-44)、平均肺動脈圧56mmHg(29-75)、肺血管抵抗10.8units×m2(2.9-22.3)であった。正常対照群と比較してPH群の方がQRS電気軸は有意に右軸で(P<0.005)、V1及び導出右側胸部誘導のR波高は有意に高かった(P<0.005)。R波高は平均肺動脈圧や肺血管抵抗と有意に相関しており、導出右側胸部誘導の相関係数(平均肺動脈圧:0.40-0.51、肺血管抵抗:0.42-0.53)はV1誘導(平均肺動脈圧:0.27、肺血管抵抗:0.30)よりも高く、より良好な相関を示した。また、ROC分析においても、導出右側胸部誘導は高い感度・特異度を示した。【結語】PH検出に導出右側胸部誘導心電図は有用である。簡便に得られる導出右側胸部誘導を用いた、新たなPHの診断基準を提示したい。