[III-OR37-04] WPW症候群に伴う心機能低下におけるリスク予測因子の検討
Keywords:WPW症候群, 心機能低下, カテーテルアブレーション
【背景】WPW症候群は,小児期に発見される心電図異常の中で頻度の高い疾患である.明らかな頻拍発作歴のないWPW症候群の中に,同期不全による左心機能低下をきたす症例が存在するが,臨床背景やリスク予測因子は明らかではない.【目的】WPW症候群に伴う左心機能低下症例の臨床背景とリスク予測因子を明らかにする.【方法】対象は2016年5月から2018年12月までの間に当院に通院していた88例のWPW症候群患者.全例に心エコー検査を行い,Simpson法でLVEF55%未満を左心機能低下症例と定義した.左心機能低下症例のうち同意の得られた8症例に対して高周波カテーテルアブレーション(RFCA)を施行(D群)し,前後での左心機能の変化を検討した.さらに,同期間に頻拍症状のためにRFCAを施行した左心機能低下のないWPW症候群症例(P群)との臨床背景および12誘導心電図を比較し,左心機能低下のリスク予測因子を分析した.【結果】88例の内訳は男児40例,女児48例,年齢中央値10歳,WPW症候群type A 15例(17.0%),type B 50例(56.8%),type C 23例(26.1%)であった.左心機能低下を認めた症例は9例で,全てtype Bであった.このうちRFCAを施行したD群は8症例で,全例左心機能が回復した(LVEF 31.5%(27~54%)→55.0%(41~60%), p=0.0313).P群は10例で、うち8例がtype Bであった.D群とP群のうちtype Bだった8例との間で,年齢や性別,副伝導路の位置による差は認めなかった.12誘導心電図の計測値のうち,II誘導のQRS幅がD群で有意に広く,左心機能低下を予測することができた(カットオフ値132msec,感度0.75,特異度1.0).【結論】 明らかな頻拍発作歴がなくても,type Bかつ心電図検査のII誘導で左脚ブロック所見をきたすWPW症候群症例は左心機能低下に注意してフォローアップを行い,必要に応じてRFCAを検討すべきだと考えられた.