[III-OR38-02] TCPC conversion前後の腹部エコー所見の考察
Keywords:単心室, 合併症, 肝細胞癌
【背景】Fontan循環における高い静脈圧環境は肝臓の線維化及び肝腫瘍などの肝障害の原因となることが知られている。長期Fontan循環患者において、classic FontanからTCPC conversionを行い、血行動態および静脈圧の改善が得られてもその後の肝障害への影響は不明である。【目的】TCPC conversion前後の肝障害の変化を腹部エコーにおいて評価し、肝障害の程度を評価する。【方法】当院にてTCPC conversionを行い1年以上follow upした患者で肝炎ウイルス感染者を除いた61例を対象として、腹部エコー所見の変化を評価した。腹部エコー所見は、正常(N)・繊維化(F)・高エコー域(H)・腫瘍性占拠病変(T)として評価した。【結果】初回Fontan到達年齢6.4±4.7歳、TCPC conversion年齢 23.4±3.4歳、前回Fontanからconversionまでの期間 17.8±5.8年、追跡期間6.0±3.5年であった。腹部エコーでは、術前の腹部エコーでNは21例、Fのみを認めた症例は27例、FとHを認めた症例は13例、F・H・Tを認めた症例は1例であった。この腫瘍は血管腫でTCPC conversion前より肝細胞癌を疑われた症例はいなかった。TCPC conversion前後での腹部エコー所見変化を15例に認めた。術前後でNからFに変化した症例が4例、Hを認めるようになったのが11例でそのうち4例でを認めた。Tを認めた4例は血管腫2例、肝細胞癌2例(TCPC conversion術後8.6年目にラジオ波焼灼療法、11.1年目に腫瘍塞栓術を実施)だった。肝細胞癌を合併した2例は術前の腹部エコーはFのみであったが、その後Hを経てTを認め腹部エコー以外の精査で肝細胞癌に至った。【考察と結語】長期Fontan循環患者でTCPC conversionに至った症例では、術前の腹部エコーで既に繊維化を認めていることが多く、術後も肝障害は持続するようであり、肝細胞癌発症のriskであると言える。腹部エコーの高エコー像は必ずしも悪性所見ではないが悪性化することを念頭に置いて、経過観察していく必要がある。