[III-OR38-03] Fontan術(F術)後患者の凝固線溶系の評価
Keywords:フォンタン手術, 凝固線溶系, トロンボモジュリン
【背景】F術後患者は過凝固状態にあると考えられているが、明確な根拠は未だ示されていない。今回F術後患者はトロンビンの向凝固作用を抗凝固作用に転換するトロンボモジュリン(TM)値が経年的に低下し、また無脾症候群の患者はより低値を示すことがわかった。そこで、F術後患者の過凝固状態を示す結果が認められるかどうか検討した。【目的】採血時の影響を避ける為に心臓カテーテル検査時に採血を行ったF術後患者318例(男/女180/138例、HLHS53例、PAIVS 38例、TA31例、右室型単心室132例、左室型単心室64例、うち無脾症候群(M群)/非無脾(非M群)45/273例)。TM値を1.8FU/ml未満(L群)と以上(U群)に分け、TAT、PIC、F1+2、FDP、d-dimer(DIM)を測定した。【結果】平均+-標準偏差、L群/U群で示す。F術時年齢3.6+-1.6/3.5+-1.2歳、検査時年齢11.9+-5.7/9.8+-5.1歳(p<0.01)、PT-INR1.73+-0.41/1.73+-0.40、F1+2 76.6+-65.5/77.4+-81.1pmol/ml、TAT 3.8+-5.9/2.9+-2.8ng/ml、PIC 0.67+-0.47/0.64+-0.30μg/ml、FDP 1.6+-0.6/1.8+-1.2μg/ml、DIM 0.55+-0.19/0.58+-0.34μg/mlで検査時年齢以外有意差は認めなかった。次にM群/非M群で示す。F術時年齢3.4+-0.8/3.5+-1.4歳、検査時年齢10.2+-5.3/10.2+-5.4歳、PT-INR1.77+-0.39/1.71+-0.41、F1+2 73.3+-70.6/78.0+-77.1pmol/ml、TAT 4.0+-6.2/3.0+-3.5ng/ml、PIC 0.79+-0.60/0.62+-0.29μg/ml、FDP 1.6+-0.6/1.8+-1.1μg/ml、DIM 0.58+-0.22/0.58+-0.31μg/ml、TM 1.9+-0.5/2.2+-0.6FU/ml(p<0.01)でTM値以外有意差は認めなかった。【考察】TM値が低値になっているF術後患者は、凝固線溶系マーカーが高値になっている可能性があり今回検討してみたが、有意差を示す指標は認めなかった。しかし、慢性的な静脈圧上昇によるTM値の低下は認められており、実際F術後患者の血栓塞栓症の報告もあり、F術後患者は過凝固状態にあると考えられ、今後も慎重な抗凝固療法は必要と考えられた。