[III-P84-04] 石灰化を伴う大動脈狭窄の経過観察中に高安動脈炎と診断された一例
Keywords:大動脈炎, 高安動脈炎, 大動脈狭窄
【背景】高安動脈炎は大動脈と主要分枝を中心に、炎症により閉塞性または拡張性病変をきたす疾患である。10歳未満の発症は稀であるが、遷延する不明熱や倦怠感などを契機に診断されることが多い。今回、心雑音を契機に石灰化を伴う大動脈狭窄が発見されたが、発熱や炎症反応の上昇はなく、3年後に側頸部痛と炎症反応上昇を認め、高安動脈炎として治療を開始した症例を経験したので報告する。【症例】10歳時に心雑音の精査目的に紹介された女児であり、背部を最強点に拡張期にかかるLevine 2/6度の駆出性雑音と、20mmHgの上下肢圧較差を認めた。超音波検査と造影CT検査にて、軽度の左室壁肥厚、上行大動脈拡大、大動脈弁閉鎖不全、および下行大動脈の広範囲にまだら状の石灰化と一部狭窄を認めた。カテーテル検査にて、上行・下行大動脈間に30mmHgの圧較差を認め、ドブタミン負荷試験では、60mmHgまで圧較差増大を認めた。血液検査上は炎症反応の上昇はなく、運動制限にて外来フォローの方針とした。症状無く、上下肢血圧差の増大無く経過し、超音波検査で心臓および下行大動脈に変化は認めなかったが、13歳時に左頸部痛が出現し、血液検査にてCRP上昇と赤沈亢進を認めた。造影CTにて頸動脈分枝部に壁不整、FDG-PET/CTにて大動脈弓部主体に集積増強を認め、高安動脈炎と診断した。プレドニゾロンを1mg/kg/dayより開始し、頸部痛は速やかに消失し、炎症反応の低下を認めた。現在、プレドニゾロンを漸減しつつ、症状の再燃がないかどうか経過観察中である。【考察】本症例は、当初、石灰化を伴う大動脈病変を認めたが、発熱や頭痛、炎症反応上昇など高安動脈炎で生じる全身症状を認めず、乳児期~幼少期に強い炎症があり、発見時には鎮静化していたことが推察される。【結語】大血管や主要分枝に狭窄、拡張所見を認めた場合、血液検査所見の有無にかかわらず高安動脈炎を念頭に精査・経過観察を行う必要がある。