第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

川崎病・冠動脈・血管

ポスターセッション86(III-P86)
川崎病・冠動脈・血管 8

2019年6月29日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (大ホールB)

座長:長井 典子(岡崎市民病院 小児科)

[III-P86-02] 中枢性塩類喪失症候群を合併した川崎病の1例

大島 正成1, 芹澤 龍太郎1, 能登 孝昇1, 野口 哲平1, 福原 淳示1, 村林 督夫1, 鮎澤 衛2, 森岡 一朗2 (1.沼津市立病院, 2.日本大学医学部小児科学系 小児科学分野)

キーワード:中枢性塩類喪症候群, 川崎病, 低ナトリウム血症

【背景】 川崎病でみられる低Na血症の病態として抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)は知られているが、中枢性塩類喪失症候群(CSWS)を合併した報告はない。【症例】3歳男児。発熱、眼球結膜充血、口唇紅潮、不定形発疹、頚部リンパ節腫脹の主要症状5項目を認め、川崎病と診断し、第2病日にIVIG 2g/kg/dose、ASA 30mg/kg/day内服を開始した。解熱しないため、第4病日に2回目のIVIGを行い、PSL 2mg/kg/dayを併用した。同日にNa 126mEq/lと低Na血症を認め、SIADHと考え水分制限を行った。第5病日に解熱したが、第6病日にNa 123mEq/lと低Na血症が進行し、意識障害を伴うようになった。水分出納はマイナスバランスで、血漿浸透圧259mOsm/kg、尿浸透圧 641mOsm/kg、尿中Na 140.1mEq/l、FENa 1.3%とCSWSを示唆する所見であった。脱水補正とNa補正を開始し、低Na血症は改善した。意識障害の精査では、頭部MRI検査は異常なく、脳波検査で背景脳波の徐波化を認めた。意識障害は経時的に改善し、第24病日に退院した。経過中に心合併症は認めなかった。【考察】CSWSは中枢神経疾患を基礎とし、尿中への多量のNaと水の喪失によって低Na血症と細胞外液量減少を呈する症候群である。機序としては交感神経抑制による近位尿細管でのNa、尿酸、水の再吸収障害、さらに脳圧亢進からANP、BNPといった液性因子が増加しNa利尿が生じると考えられている。頭部手術後、頭蓋内病変、中枢神経感染症等で見られるが、本症例では川崎病に起因する液性因子の増加や頭蓋内の血管炎がCSWSを引き起こした可能性がある。川崎病での低Na血症はしばしば認められるが、SIADHとCSWSでは治療が全く異なるため、病態の判断には注意が必要である。