[III-P87-03] 運動時の胸痛を契機に診断された右冠動脈左冠動脈洞起始の2例
Keywords:右冠動脈左冠動脈洞起始, 先天性冠動脈異常, 心肺停止
【緒言】右冠動脈左冠動脈洞起始(以下本症)は全人口の約1%に存在すると言われている.今回,私たちは本症の小児例と成人例を経験したので報告する.【症例1】10歳男子.家族歴として母方の祖父が本症の診断で冠動脈バイパス術と経皮的冠動脈ステント留置術を受けている.本児は運動時の胸痛を主訴に当科外来を受診.心エコー検査で本症が疑われ,造影CT検査で本症の確定診断となった.運動負荷心筋Tc-99m tetrofosminシンチで虚血所見を認めなかったため,手術は行わない方針となった.現在は胸痛を認めず外来経過観察中である.【症例2】55歳男性.遠方から当地開催のフルマラソンの参加中に胸痛を自覚した後失神.メディカルランナーによる救命処置とAED使用後に意識が回復し,当院へ救急搬送された(AED解析で心室細動と判明).搬送直後の心臓カテーテル検査で右冠動脈が描出されず,第2病日の造影CT検査で本症の確定診断となった.心筋BMIPPシンチでは虚血所見を認めず,再心臓カテーテル検査でのアセチルコリン負荷試験において冠攣縮所見は認めなかった.患者本人の手術希望が無かったため,過度の運動を避けるように指導し,患者の地元の病院に紹介した.【考察】本症を含む先天性冠動脈異常は,胸痛や突然死の原因検索の際の鑑別疾患として重要である.しかし,症状が出現するまで診断されないことが多く,その小児期からの自然暦は明らかでない.そのため,診断後の治療法が定まっているとは言い難く,今後の治療法の確立のために今回のような症例報告の蓄積が重要であると考えた.