[III-P90-01] 喀血で診断された一側肺動脈欠損の一例
Keywords:一側肺動脈欠損, 喀血, 左動脈管
【初めに】 先天性心疾患に伴う末梢性肺動脈閉鎖は珍しくないが、心内構造異常を伴わない症例は稀である。右大動脈弓を除いて合併奇形なく、10歳まで無症状で経過したのちに、喀血で診断に至った一側肺動脈欠損の一例を報告する。【症例】 11歳 女児、周産歴・発達歴に異常の指摘なし、10歳になってから少量ながら喀血を繰り返し、耳鼻科経由で呼吸器内科へ紹介となり、精査の結果 気管内出血・左肺動脈閉鎖(欠損疑い)・右大動脈弓と診断され、当科へ紹介となった。バイタルサイン安定(desaturationなし)、心不全マーカーの上昇なし、心電図異常なし、レントゲンで明らかな異常所見なく、心内構造異常を認めなかった。気管支ファイバーで左気管支内の血管怒張が目立っていた。肺血流シンチで左肺潅流は完全に欠損していたが、造影CTでは左肺の造影効果を認めた。心臓カテーテル検査で、左肺動脈閉鎖を確認、左内胸動脈造影で左肺動脈への側副血管を少数認めたが左肺動脈血管床は乏しく、中心静脈圧上昇や肺高血圧を認めなかったが、RVEDVI=75.5ml/m2・RVEF=45.0%・LVEDVI=92ml/m2・LVEF=56.9%と心収縮能の軽度低下が見られた。また右大動脈弓にもかかわらず左動脈管の痕跡が見られており、両側動脈管のために左肺動脈近位部欠損(左動脈管から左肺動脈へ潅流)となった後に左動脈管まで閉塞したと推測した。左肺動脈の再開通は困難と判断、また側副血管へのコイル塞栓などを含めて治療介入は行っていないが、検査後10か月の時点では喀血は見られていない。【まとめ】 喀血の機序としては、右肺動脈に伴う左動脈管の閉鎖時に左肺動脈が閉塞してしまい、活動性の増加と共に左肺への側副血管が発達し、気管内出血を来したと考えた。側副血管による喀血を反復する場合は、同血管へのコイル塞栓などの介入を検討する。