[III-P90-02] 早期診断に苦慮した、総肺静脈還流異常症に伴うOrtner症候群の1乳児例
Keywords:Ortner症候群, 総肺静脈還流異常, 嗄声
【はじめに】心疾患を原因として生じる左反回神経麻痺はOrtner症候群として多種の心疾患で報告されている。一方、総肺静脈還流異常症 (TAPVC)は生直後に診断されることが多いが、ときに、肺静脈狭窄を伴わない症例では症状が目立たずに診断が遅れる場合がある。今回、嗄声のみを主訴に来院し、早期診断に苦慮したTAPVCの1乳児例を報告する。【症例】生後3か月男児。周産期に異常は指摘されなかった。生後1か月から嗄声が認められていたが、哺乳良好であり経過観察されていた。生後3か月時に嗄声の精査目的に当院を紹介受診した。嗄声に加え、胸骨上窩の陥没呼吸が認められ、上気道狭窄病変が強く疑われた。胸部X線やSpO2測定は行われないまま近隣大学病院耳鼻咽喉科へ紹介され、喉頭ファイバー検査で左声帯麻痺と診断された。検査時に生じたチアノーゼを契機に心疾患が疑われ、胸部X線、心エコー、造影CTが施行され、TAPVC (1a)と診断された。肺静脈狭窄はなかったが、推定右室圧が80mmHg以上と肺高血圧を生じており、準緊急でTAPVC修復術が施行された。術後経過良好で、左声帯麻痺も術後約1年で改善した。【考察とまとめ】Ortner症候群を生じる機序として、拡大した左肺動脈による左反回神経圧排が考えられている。本症例のCTでも、著明に拡大した肺動脈と大動脈弓の間のスペースは非常に小さく、同部位での左反回神経障害が示唆された。Ortner症候群の中には、心疾患の症状が目立たず,反回神経麻痺を契機として,原疾患である心疾患の診断に至った報告もみられる。自験例では上気道病変のみを第一に考え心疾患の精査が遅れた。嗄声の鑑別診断に心疾患を挙げていれば胸部X線やSpO2測定を行い、早期診断に結びつけられたと考えられる。嗄声を主訴に来院した乳児患者と遭遇した場合、心疾患も鑑別に挙げて診療にあたることが重要である。