第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

一般心臓病学

ポスターセッション90(III-P90)
一般心臓病学 3

2019年6月29日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (大ホールB)

座長:早渕 康信(徳島大学病院 小児科・地域小児科診療部)

[III-P90-03] 僧房弁瘤の穿孔により重症僧房弁閉鎖不全症を認めた乳児例

長岡 孝太, 山口 英貴, 清水 武, 樽井 俊, 伊吹 圭二郎, 大山 伸雄, 藤井 隆成, 宮原 義典, 籏 義仁, 石野 幸三, 富田 英 (昭和大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター)

キーワード:僧房弁瘤, 僧房弁穿孔, 僧房弁閉鎖不全症

【背景】僧帽弁瘤の穿孔による僧帽弁閉鎖不全(MR)の報告は少なく、多くは感染性心内膜炎(IE)に合併する。演者らが検索した範囲ではIEを合併しない例の報告は文献上認められず、第一例と思われるIE非関連の僧帽弁瘤穿孔の乳児例を経験したので報告する。【症例】8か月男児、10日間続く咳嗽を主訴に前医を受診し、重症MRを認め当院紹介となった。発熱はなく、多呼吸を認め、血液検査でCRP 5.47mg/dL、BNP 819pg/mL、胸部単純エックス線で心拡大と肺うっ血を認めた。心臓超音波検査では僧帽弁後尖に8.9×7.5mmの嚢状の構造物を認め、その中央から逆流ジェットを認めた。弁下組織の形態異常や贅腫を認めず、原因として僧帽弁瘤およびその穿孔を疑った。入院翌日に心不全増悪により人工呼吸器管理を要し、外科的僧帽弁形成術を行った。術中所見では、僧帽弁後尖(P2)に瘤状の病変と瘤中央に5mm径の孔を認め、僧帽弁瘤の穿孔と診断した。穿孔した部位は直接縫合することで閉鎖した。縫合に際して弁の短縮を防ぐため縫合線が弁尖と垂直になるよう工夫を行い、MRは軽度まで改善した。病理検査に提出した穿孔部切片には炎症性変化は認めなかった。現在術後6か月以上経過しているが、MRの増悪は認めない。【考察】僧帽弁瘤の穿孔は大動脈弁に生じたIEとその逆流ジェットによるとの報告が多い。本症例では病理所見から孤立性の僧帽弁瘤が穿孔したものと推測される。小児では僧帽弁瘤を合併しない孤立性僧帽弁穿孔の報告は数例あるが、IEが関与しない僧帽弁瘤穿孔は文献上過去に報告が無い。小児期の孤立性穿孔の報告では病変部に炎症性の所見を認めなかったことから先天性のものであると考察されている。本症例でも同様に病変部の炎症性変化は認められず、何らかの先天性素因が関与している可能性が示唆された。【結語】僧帽弁瘤の穿孔により重度僧帽弁閉鎖不全症を認めた乳児例を経験した。IE非関連の症例としては初の報告である。