[III-P91-03] 左冠動脈肺動脈起始に対する左冠動脈移植の工夫
Keywords:左冠動脈肺動脈起始, 直接吻合法, 冠動脈異常
【背景】 左冠動脈肺動脈起始の外科治療においてはtwo coronary systemの確立が望ましい。Takeuchi法や種々の冠動脈延長法併用した直接吻合法が報告されているが、手技的な問題点は左冠動脈の開口部の位置に依存する。【目的】 左冠動脈開口部が肺動脈左洞の1例および右肺動脈起始部の1例について左冠動脈移植法の工夫と留意点を報告する。【症例1】 年齢 2か月、体重4.0kg。左冠動脈は肺動脈左洞の左―前尖交連部に近接して開口していた。交連部を削ぎ落として前洞の左半分から左洞全体切除して大きな冠動脈カフを作成、交連部に相当する切込み部位を縫合して全体を漏斗状に形成することで冠動脈を延長した。左冠動脈の剥離を追加して上行大動脈にtrap doorを作成することで無理なく直接吻合することができた。【症例2】 年齢 11歳、体重28kg。左冠動脈は右肺動脈起始部から起始して大動脈―主肺動脈間を上行大動脈に接しながら下行して肺動脈弁輪部で通常の左冠動脈の走行へと移行していた。肺動脈壁とともに冠動脈を大きく切除して遊離、上行大動脈から剥離を試みたが途中で剥離することができず壁内走行が示唆された。冠動脈の十分な受動ができないため逆行性血流が途切れないことを目安に、右後方へ180°反転、さらに反時計回りに90°回旋して直接吻合を行った。【結果】 症例1は術前からの左心機能低下のため補助循環が必要であったが、その後の経過は順調であった。2例ともに術後冠動脈造影において左冠動脈の血流および左心機能は良好あった。【考察】 二つのバルサルバ洞を利用して漏斗状に形成する方法は十分な延長効果があり縫合線も単純かつ簡便である。左冠動脈右肺動脈起始において本症例のような冠動脈走行の場合には、壁内走行の可能性があると報告されている。術前診断は困難とも指摘されているが、術前から壁内走行にも留意すべきであった。