[III-P95-01] 新生児期に重篤な不整脈を示したLQT3患者のiPS細胞由来心筋細胞を用いたin vitroモデルの心機能評価
Keywords:Nav1.5, LQT3, iPS
【背景】QT延長症候群(LQTS)3は、SCN5A遺伝子の機能獲得型変異によって引き起こされる。患者血液細胞由来のiPS細胞から分化誘導して得られる心筋細胞(iPSC-CM)は、患者心筋細胞に代わり、先天性心疾患や遺伝性不整脈を引き起こす遺伝子変異による細胞機能変化の評価に用いることができる。【目的】新生児期に重篤な不整脈を示したLQT3患者(SCN5A遺伝子ヘテロ接合体変異(R1623Q)を持つ)のiPSC-CMを用いて心筋細胞の機能評価を行う。【方法】患者並びに健常者の末梢血から不死化B細胞株を作製し、山中因子を導入してiPS細胞株とし、さらにiPSCから心筋細胞に分化させたiPSC-CMを作製した。多点平面微小電極システム(MED64, Alpha MED Scientific)を用いて単層のiPSC-CMの外部電流を測定し、電界電位持続時間(FPD)を得て、Fridericia法により補正したFPDcF(心電図のQTc間隔に相当)を算出した。またオートパッチクランプ法(Syncropatch 384 PE, Nanion Technologies)によるiPSC-CMの電気生理学的な検討も行った。 【結果】LQTS3患者iPSC-CMのFPDcF値は健常者と比較して有意に長かった(p<0.0001)。15~30nMのIKr特異的ブロッカーE4031を添加すると、患者iPSC-CMでは早期後脱分極(EAD)が多発した。また患者iPSC-CMのNa電流の不活性化の遅延が認められた。【結論】新生児期の重篤な不整脈を生じた患者iPSC-CMを用いたin vitroモデル系において、顕著なQTの延長、EAD発生、Na電流の不活性化の遅延を検出した。このin vitroモデルはLQT3疾患の評価において有用であり、薬剤評価などへの利用も可能である。