[III-P95-02] 酸素代謝による心筋細胞の細胞周期制御
Keywords:心筋細胞, 酸化ストレス, 細胞周期
我々を含む哺乳類の成体では,ほとんどの心筋細胞が細胞周期に入る能力を持たず,そのため我々には心筋梗塞等で損傷を受けた心筋組織を再生させる能力がない.いっぽう胎仔・新生仔期の心筋細胞は増殖能があり,心筋再生能も備わっている.しかし心筋細胞の増殖能は出生後すぐに失われる.したがって心筋細胞の増殖能が出生後に失われる機構を解明することは重要な研究課題である.我々はこれまでにマウス新生仔を用いて,出生後の酸素環境の変化がミトコンドリア由来のROS産生を通じて心筋細胞に酸化ストレスをもたらすこと,またそれによって心筋細胞の細胞周期停止が誘導されることを示した.さらにこの知見を応用し,成体マウスを低酸素環境に晒すことで心筋細胞でのミトコンドリア由来の酸化ストレス発生を低減し,心筋細胞の細胞周期再エントリー誘導を介して梗塞心において左室収縮能改善を得られることを明らかにした.本発表では以上の知見を踏まえ,環境応答の違いによって脊椎動物種間の心筋再生能の有無を説明することも試みたい.