[III-P95-03] 動脈管閉鎖とともに右肺動脈狭窄をきたした遠位型右肺動脈上行大動脈起始症の1例
Keywords:右肺動脈上行大動脈起始, 動脈管, 肺動脈狭窄
【はじめに】右肺動脈上行大動脈起始症(以下AORPA)は稀な疾患であるが、一側肺動脈欠損と同一範疇の発生異常と考えられている。今回我々は出生後より遠位型AORPAの経過を追ったところ、通常の動脈管閉鎖とともに右肺動脈起始部にも狭窄を来したため、異所性動脈管と判断、Lipo-PGE1を投与し狭窄改善を認めた一例を経験した。【症例】胎児期より肺動脈の拡張を認めていた。妊娠高血圧症候群のため、緊急帝王切開で出生、在胎37週0日、体重2420g。出生時の心臓エコーでは主肺動脈、左肺動脈の拡張および動脈管の右左短絡を認めたが、右肺動脈を確認できず、日齢1のCTで右腕頭動脈より右肺動脈が分枝していることを確認、遠位型AORPAと診断。その他の合併奇形は認めなかった。動脈管は徐々に狭小化、日齢21に閉鎖したが、ほぼ同時期に右肺動脈起始部に限局性の狭窄が出現し、右肺への血流が減少した。Lipo-PGE1投与で狭窄は改善し、右肺動脈への血流を維持した。日齢45右肺動脈再建術を施行。術後17日退院、以後肺動脈狭窄は認めず、術後経過は順調である。【考察】本症例は遠位型AORPAにおいて限局性に動脈管組織を含んだ右肺動脈起始部が閉鎖傾向となった。胎内での肺動脈拡張の指摘がなければ、生後の呼吸障害は目立たなかったため、入院精査とならず右動脈管は自然閉鎖し、右側肺動脈欠損に至った可能性がある。発生学的には、胎生初期の動脈幹中隔の形成異常により、右肺動脈と肺動脈幹の連続性が得られず、大動脈弓の発生における右第6鰓弓動脈の近位部が消失し、本来消失するはずの遠位部が右動脈管として残存したため、右肺動脈への血流が維持されていたと考えられる。【結語】遠位型AORPAは動脈管組織の影響で右肺血流が途絶する可能性があり、注意が必要である。