[III-P97-04] 心房中隔欠損症(ASD)における高感度心筋トロポニンI(TnI), 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の検討
Keywords:心房中隔欠損症, TnI, BNP
【はじめに】心房中隔欠損症において、高感度心筋トロポニンI(TnI)と脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が診療に有用であることが報告されているが、その臨床的意義については十分な検討がなされていない。【対象・方法】2012年3月から2017年9月まで北海道立子ども総合医療・療育センターで施行したASD診断カテ107件を対象とした。新生児例と他の心疾患合併例は除外した。全身麻酔下心臓カテーテル検査のシース留置直後に採血し血漿TnI 、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を測定した。TnI、BNP値と各種カテーテルパラメータ(Qp/Qs、Pp/Ps、Rp、Rp/Rs、%LVEDV、%RVEDV)との関連について検討した。統計学的手法は単回帰分析とステップワイズ法を用いた重回帰分析を用いた。【結果】(1)単回帰分析:TnIは%LVEDV(r=-0.194, p=0.045),%RVEDV(r=-0.240, p=0.013)と相関し、Qp/Qs(r=-0.051, p=0.30),Pp/Ps(r=-0.052, p=0.30),Rp(r=-0.074, p=0.22),Rp/Rs(r=-0.013, p=0.45)とは相関しなかった。BNPはPp/Ps(r=0.376,p<0.001),Qp/Qs(r=0.473,p<0.001),%RVEDV(r=0.492,p<0.001)と相関し、Rp(r=-0.133, p=0.09),Rp/Rs(r=0.010, p=0.46),%LVEDV(r=0.149, p=0.063)とは相関しなかった。(2)重回帰分析:従属変数をTnIとした重回帰分析において%LVEDV, %RVEDVは有意な回帰係数ではなかった(%LVEDV:p=0.89,%RVEDV:p=0.081)。従属変数をBNPとした重回帰分析においてPp/Ps,Qp/Qs,%RVEDVは有意な回帰係数であった(Pp/Ps:p=0.021,Qp/Qs:p=0.0042,%RVEDV:p=0.008)。【考察】ASD患者におけるBNPは室圧負荷・用量負荷を反映する有用なマーカの一つと考えられた。一方TnIはASDの血行動態と別の要因が影響している可能性が示唆された。