[III-PD08-03] 促進型固有心室調律?それとも心室頻拍? その診断と治療方針を巡って
キーワード:固有心室調律, 心室頻拍, 治療
促進型固有心室調律とは心室調律(固有心室筋起源のリズム)のうち、おおむね心拍数100bpm以下のものを促進型心室固有調律とよぶ。通常は良性であり、血行動態障害による症状を伴わない限り治療は行わない。症例は14歳男児。小学校1年生の学校検診で心室期外収縮を指摘され前医にて経過観察を開始された。促進型固有心室調律と思われる遅い心室リズムと連結期の短い非持続性心室頻拍を認めていた。運動によりPVCは消失するため運動管理区分はE可とされていた。安静時のリズムは心拍数85/分の固有心室調律だが、時に固有心室調律と同型の心室期外収縮を挟んでいた。運動負荷ではこの心室期外刺激は消失せず、負荷後の心電図で連結期の短い心室期外収縮が連発していた。当院に紹介された時点では運動後に動悸と胸痛の自覚症状が出現β遮断薬、フレカイニドで期外収縮は軽快するため、フレカイニドの内服を行っていた。心電図からは心室調律の起源は左室基部と考えられた。カテーテルアブレーションを希望され、全身麻酔下にマッピングを行ったところ僧帽弁輪外側に起源を認め、アブレーションに成功した。通常固有心室調律は良性であり介入を必要としないが、経過フォロー中に症状発現する例があり一定のフォローが必要と考えられる。良性の固有心室調律と心室期外収縮が同一の起源から出現しており、メカニズムを考える上で非常に興味深い症例と考えられた。