[I-PD02-1] 【基調講演】遺伝性不整脈の遺伝学的検査結果を臨床現場で活用するために
Keywords:遺伝性不整脈, 遺伝学的検査, 次世代シークエンサー
遺伝性不整脈は若年者突然死の原因となる心室不整脈を生じる疾患であり、早期診断・治療が不可欠である。その代表的なものが先天性QT延長症候群(LQTS)であり、心電図上のQT時間延長とtorsades de pointesと呼ばれる心室不整脈を特徴とする。約75%の患者に遺伝子変異が同定され、変異が同定されるLQTS患者の約90%は1型から3型(LQT1-LQT3)に分類される。LQTSでは遺伝型によって症状出現の状況や重症度・治療法が異なるため、遺伝型の同定が診療には不可欠である。近年、次世代シークエンサーを用いた解析が可能になり、解析対象遺伝子の範囲が広がったことで、LQT1-3以外のLQTSと診断される症例が増加し、その臨床的特徴も明らかになってきている。カテコラミン誘発性多型性心室頻拍(CPVT)は運動や情動ストレスで二方向性・多型性心室頻拍を生じる疾患である。運動時の失神や心肺停止蘇生後の軽度QT延長から、LQT1と誤診されることもある。しかしLQTSと比較してCPVTは予後不良の疾患であり、遺伝学的検査を含めた正確な診断が求められる。主な原因遺伝子は心筋リアノジンチャネルをコードするRYR2である。ブルガダ症候群は右側胸部誘導のST上昇と夜間安静時の心室細動を特徴とし、30代以上の男性に好発する疾患である。稀ではあるが、小児例も存在する。主な原因遺伝子は心臓ナトリウムチャネルをコードするSCN5Aであり、成人での遺伝子変異同定率は20%に満たないものの、小児では約半数に変異が同定される。小児例の他の特徴として、徐脈性・上室性不整脈の合併が多く、男女差が少ないことがあげられる。現在、国内で保険償還されている遺伝学的検査はLQTSのみであるものの、他の遺伝性不整脈においても、その有用性が報告されてきている。本セッションでは遺伝学的検査のデメリットを含め、臨床現場で役立つ情報を提示したい。