[I-PD03-3] 慢性心筋炎と拡張型心筋症:INDICATE studyから
Keywords:慢性心筋炎, 拡張型心筋症, 炎症細胞
拡張型心筋症(DCM)は,種々の病因・病態に基づく多様な心筋疾患群の総称である。心筋炎のなかでも潜在性に進行する慢性リンパ球性心筋炎(不顕性慢性心筋炎)はその病因の一つであることが示唆されているが、通常は生検や剖検で病理組織診断により偶発的に見つかる。また炎症が心不全の進行に寄与しているとの考えから、近年、炎症性DCMという概念も提唱されている。このようなDCMの心筋組織における炎症の検出は予後の予測や、免疫抑制療法の可能性を考慮する上で重要と考えられるが、我が国における頻度や予後への影響などの実態は不明である。そこで、我々はDCM症例に炎症が見られる頻度と、その意義、特に長期予後への影響を明らかにするために、当院を含む8施設による後ろ向きの多施設共同研究(心内膜心筋生検組織を用いた拡張型心筋症における炎症細胞の意義を解明する多施設研究:INDICATE study)を行った。その結果261例(年齢中央値 55歳)のうち、約半数(48%)が欧州心臓病学会の提案した炎症性DCMの診断基準(2013年)を満たしていた。炎症細胞のうちT細胞に着目したところ、CD3陽性T細胞のカウント数が 10/mm2を超える症例(n=113, 43%)は、中央値7.4(IQR 3.9-9.8)年の追跡期間における長期予後(複合エンドポイント:心臓死あるいは左室補助人工心臓植込み, Log-rank P=0.001)が有意に悪く、20/mm2を超える症例(n=35, 13%)ではさらに不良で、CD3陽性T細胞のカウント数は独立した予後予測マーカーであった。これらの結果からDCMのうち約半数に免疫組織学的な“炎症”がみられ、その中に免疫抑制療法を含むより重点的な治療を要する可能性のある患者群が存在することが示唆されたので文献考察とともに紹介する。