[I-PD03-5] 小児重症拡張型心筋症における慢性心筋炎の存在 ~Is it idiopathic? or inflammatory?~
キーワード:拡張型心筋症, 慢性心筋炎, 炎症性心筋症
【背景】
慢性心筋炎/炎症性心筋症(iDCM)は、その疾患概念や病態、疫学について未だ明らかでない点も多い。わが国においても成人DCM患者の約半数にiDCMの基準を満たす炎症細胞浸潤が見られたとの報告があるが、特に小児における実態は明らかではない。
【目的】
小児重症拡張型心筋症患者における慢性心筋炎の重要性を検証する。
【対象と方法】
当院で2014年から2019年までに心臓移植適応判定申請を行った小児患者40名のうち、DCMと診断され、かつ心筋組織が得られた25名を対象に、申請時の心筋生検組織を解析した。
【結果】
25例中iDCMの基準を満たす炎症細胞浸潤を認めたのは9例(36%)であった。そのうち7例はごく軽度の炎症細胞浸潤のみであったが、2例では中等度の炎症細胞浸潤を認めた。炎症細胞はCD3陽性T細胞とCD68陽性マクロファージが主であった。1例ではDCM/心筋緻密化障害の経過中に急性心筋炎が合併した可能性も考慮された。もう1例では局所的な炎症細胞浸潤に対して、広範な領域の間質線維化を認めた。2例ともLVAD装着が必要であったが、その後の経過で離脱して内科治療を継続中である。炎症細胞浸潤の有無とLVAD離脱可能か不可能かは関連がなかった(P=0.70)。ごく軽度の炎症細胞浸潤の1例は、その後ミトコンドリア心筋症であることが判明した。一方で心筋症の原因となる遺伝子異常が判明した3例のうち炎症細胞浸潤を認めた症例はなかった。
【結語】
小児DCMの中でも約1/3の症例で炎症細胞浸潤を認めた。多くは心筋細胞障害を伴わないごく軽度の細胞浸潤で、これら全てが慢性心筋炎/iDCMとは考えにくいが、中等度以上の細胞浸潤例では持続する炎症が主体的にDCM発症に寄与した可能性は否定できない。また我々は、無症状で経過するものの心筋逸脱酵素の上昇を反復し、遅延造影陽性となったサイレントな乳児症例も経験しており、今後、慢性炎症とDCM発症についての基礎研究や症例蓄積が必要である。
慢性心筋炎/炎症性心筋症(iDCM)は、その疾患概念や病態、疫学について未だ明らかでない点も多い。わが国においても成人DCM患者の約半数にiDCMの基準を満たす炎症細胞浸潤が見られたとの報告があるが、特に小児における実態は明らかではない。
【目的】
小児重症拡張型心筋症患者における慢性心筋炎の重要性を検証する。
【対象と方法】
当院で2014年から2019年までに心臓移植適応判定申請を行った小児患者40名のうち、DCMと診断され、かつ心筋組織が得られた25名を対象に、申請時の心筋生検組織を解析した。
【結果】
25例中iDCMの基準を満たす炎症細胞浸潤を認めたのは9例(36%)であった。そのうち7例はごく軽度の炎症細胞浸潤のみであったが、2例では中等度の炎症細胞浸潤を認めた。炎症細胞はCD3陽性T細胞とCD68陽性マクロファージが主であった。1例ではDCM/心筋緻密化障害の経過中に急性心筋炎が合併した可能性も考慮された。もう1例では局所的な炎症細胞浸潤に対して、広範な領域の間質線維化を認めた。2例ともLVAD装着が必要であったが、その後の経過で離脱して内科治療を継続中である。炎症細胞浸潤の有無とLVAD離脱可能か不可能かは関連がなかった(P=0.70)。ごく軽度の炎症細胞浸潤の1例は、その後ミトコンドリア心筋症であることが判明した。一方で心筋症の原因となる遺伝子異常が判明した3例のうち炎症細胞浸潤を認めた症例はなかった。
【結語】
小児DCMの中でも約1/3の症例で炎症細胞浸潤を認めた。多くは心筋細胞障害を伴わないごく軽度の細胞浸潤で、これら全てが慢性心筋炎/iDCMとは考えにくいが、中等度以上の細胞浸潤例では持続する炎症が主体的にDCM発症に寄与した可能性は否定できない。また我々は、無症状で経過するものの心筋逸脱酵素の上昇を反復し、遅延造影陽性となったサイレントな乳児症例も経験しており、今後、慢性炎症とDCM発症についての基礎研究や症例蓄積が必要である。