[I-TRS02-2] VAD装着患児における理学療法の方針と実践-大阪大学医学部附属病院-
キーワード:小児重症心不全, 補助人工心臓, 理学療法
【はじめに】小児重症心不全患者では、長期心臓移植待機に伴い補助人工心臓(VAD)治療も長期管理を要する。そのため、長期VADサポート中も安全を確保しつつVAD装着患児の身体機能・運動耐容能を維持改善し、身体発達を促すことが重要となるが、その実際の方法や効果はよく分かっていない。今回、当院における小児用VAD(EXCOR)装着患児に対する理学療法(PT)の経験について報告する。【対象】2015年から2020年7月に当院でEXCOR装着術後PTを実施した8名(装着時年齢3.5(0.1-11.1)歳、男児2例、基礎疾患RCM3例、DCM3例、ICM1例、先天性心疾患1例)。装着時3歳以上の5例は術前までに歩行以上の動作を獲得済の一方、3歳未満の3名は歩行獲得に至っていなかった。術後69(8-303)日よりPTを開始した。【目標】PT開始時の動作能力は術後303日経過の1例を除き全例で術前より低下していため、3歳以上の症例では歩行自立を、3歳未満の症例では術前もしくは年齢相応の発達を目指した段階的な粗大運動獲得を目標に設定した。【実践】PT期間中、身体への過負荷やIKUSの移動、駆動チューブ・ポンプ固定の状況等の安全性を確保しつつ、遊びの中で適切な負荷がかけられるよう工夫を行った。その為に適宜他職種との連携を図った。【結果】8例へ172(51-294)日間PTを実施。内3歳以上2例は歩行自立を、3歳未満の1例は術前獲得の粗大動作より高い目標を達成した。加えて待機中の3名(3歳以上2例・未満1例)はPT開始時より動作能力を改善し、目標達成に向けPTを安全に継続できている。その他2名(3歳以上・未満各1例)は右心不全が顕著となり運動負荷量の低減を要したため、目標達成に至らなかった。8例中6例は良好なPT効果が得られる結果となった。【まとめ】EXCOR装着患児では術後は術前の獲得動作よりも動作能力が低下するが、適切な体調管理や安全確保の元実施された積極的なリハビリ介入により動作能力は改善し、発達の促しが可能と考えられた。