[II-OEP08-1] 心不全治療中の中心静脈カテーテル閉塞の原因の検討
Keywords:インラインフィルター, フィルター閉塞, 配合変化
【背景】重症心不全の治療に中心静脈カテーテル(CVC)を用いて心不全治療が行われているが、近年点滴薬剤中に存在する目視可能なサイズ以下の粒子による有害性の指摘が散見される。拡張型心筋症と診断され抗心不全治療を開始した症例で、経過中点滴ルートの閉塞が頻発したため原因の精査を行った。【方法】CVCの1ルーメンにドブタミン、オルプリノン、ヘパリン、5%ブドウ糖液をインラインフィルター(孔径0.2μm)を介して送液し、1)~4)についてフィルター未使用品(コントロール:C)と使用した5個のフィルターを検討した。 1)フィルター観察:外観・膜表面およびフィルター内の残液の性状 2)フィルター流量試験および残液の性状(pH・濁り・不溶物) 3)走査型電子顕微鏡(SEM)観察:フィルター膜を観察 4)エネルギー分散型X線分析装置(X線分析):SEMにて観察した部位の表面に存在する元素を分析 【結果】CVCや輸液ラインおよびフィルターに外観の異常は認めなかった。しかし、全ての薬液が混合され通過するCVCに最も近い部分に設置されたインラインフィルター(A)にはフィルター内部一次側表面の約90%に白色の捕捉物が確認され、他のフィルター膜は異常を認めなかった。流量試験では(A)のみ(C)と比較し流量が17%に減少しており、残液は無色透明で目視で確認できる不溶物は認めなかった。SEM観察では(A)のみ一次側に多量の捕捉物と二次側に固形物の付着を認め、これらをX線分析したところ(C)と異なる比率で酸素および硫黄が検出された。【考察】ドブタミンとヘパリンナトリウムの配合変化が報告されており、日常的に使用される薬剤において外観上問題がなくとも条件によっては有機物が形成されフィルターが閉塞する可能性がある。また、不可視な微細な有機物が堆積することでカテーテル関連感染のリスクとする報告もあり、心不全状態ではインラインフィルターの使用は重要と思われた。