第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長賞講演

会長賞講演(II-PAL)

2020年11月23日(月) 10:15 〜 11:05 Track1

座長:笠原 真悟(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科)
座長:土井 庄三郎(国立病院機構 災害医療センター)
コメンテーター:John P.Cheatham(Nationwide Children's Hospital & The Ohio State University)

[II-PAL-3] Fallot四徴心内修復術後遠隔期の肺動脈弁置換術時における右室拘束性障害

富永 佑児, 上野 高義, 金谷 知潤, 奥田 直樹, 荒木 幹太, 渡邊 卓次, 澤 芳樹 (大阪大学 医学系研究科 心臓血管外科学)

キーワード:右室拘束性障害, ファロー四徴症, 肺動脈弁置換術

[背景]右室拘束性障害の指標の一つとして,肺動脈の拡張末期順行性血流(EDFF)を用いた報告が見られる.今回,EDFFを用い,Fallot四徴(TF)心内修復術後遠隔期の肺動脈弁置換術(PVR)において右室拘束性循環動態の術前右心機能の特徴と術後経過への影響を評価した.[対象,方法] 2003から2018年に当院でTF心内修復術後にPVRを施行した43例(severe PS症例を除く)を対象とした.EDFFは,心エコーまたはMRIにて術前に評価した.PVRは生体弁もしくは脱細胞弁を用い,術前に心房性不整脈(発作性心房細動,心房粗動,心房頻拍)を認めた14例でMaze手術を併施した.PVR前にEDFFを認めたrRV群と認めなかったN群に分け,生存率,心房性頻脈性不整脈(発作性心房細動,心房粗動,心房頻拍)の有無,右心機能を比較検討した.[結果]rRV群は19例,N群は24例で,N群の1例を非心臓疾患にてPVR後10年で失った. 再PVRは,rRV群で1例(術後5年ARに対するAVR時),N群は2例(術後3年ARに対するAVR時,術後13年でIE治療時)に施行し,生体弁機能不全による再PVRはなかった.ICR時年齢はrRV群4.6±4.4(平均値±標準偏差)vsN群3.3±2.8歳(p=0.3).PVR時年齢は38±14vs32±11歳(p=0.13).interval期間は33±10vs28±10年(p=0.15).PVR後観察期間は5.1±3.2vs8.2±3年(p=0.003).術前のRVEDVI(p=0.84),RVEDP(p=0.46),RVAI(p=0.29),meanRAP(p=0.72),RVSP(p=0.82),肺動脈弁圧格差(p=0.29),術後1年のRVEDVI(p=0.38)に差は認めなかった.術前RVESVI(104±24vs86±30ml/m2,p=0.039)とRVEF(36±9vs46±10%,p=0.039),術後1年のRVESVI(76±24vs58±18ml/m2,p=0.018)には有意な差を認めた.また,術前心房性不整脈の発生頻度は変わりなかった(6/19例vs8/24例,p=1.0)が,術後の心房性不整脈発症は残存群で多く(5/19例vs0/24例,log-rank p=0.0027), PVR後4.7±4.8年で発症を認めた.[まとめ]PVR前に右室拘束性障害が示唆される症例では術前後のRVESVIが大きく,術後心房性不整脈の発症が多かった.