[II-PD05-7] 小児心臓移植後の移植後リンパ球増殖症の現状と課題
Keywords:心臓移植, 補助循環, 移植後リンパ球増殖症
移植後リンパ球増殖症(Posttransplant lymphoprolifirative disorder)は、小児の臓器移植後に発生する悪性腫瘍の90%以上を占め、遠隔成績に左右する重要な合併症である。本症は生涯免疫抑制薬を回避できない心臓移植後に発症率が高く(6-10%)、肝移植後に比べて予後不良であり、治療戦略も複雑である。PTLDは非移植患者の悪性リンパ腫に類似しているが、臨床症状、腫瘍化するリンパ球の型、組織型も多彩であり、疾患概念についても論議が多く、診断方法、治療方法もいまだ確立されていない。小児期PTLDの大多数がEbstein-Barrウイルス(EBV)に起因するB細胞型であるが、日本人成人のEBV保有率は欧米に比して有意に高く、ドナー・レシピエントミスマッチ、移植後の初感染のリスクが高いので、欧米以上に発症率・重症化率が高い。我々が調べた範囲では、2018年末までに心臓移植を受けた日本人590例(国内:成人386例、小児32例、国外:成人59例、小児123例)を調査し、成人15例[国内10例(2.6% )、国外5例(8.5%)]、小児20例[国内1例(3.1%)、国外19例(15.4%)]にPTLDの発症を認めた。成人4例(国内:全死亡28例中2例、国外:全死亡14例中2例)、小児5例(国内:全死亡2例中0例、国外全死亡17例中5例)が死亡しており、 PTLD発症率は欧米と同じで、予後も不良であった。小児PTLDは、成人PTLDに比較してEBV関連B細胞型が多く、移植後の発症期間が短く、小児悪性リンパ腫と比較して、男女差なく、腹痛・発熱の初発例が多く、EBV関連B細胞型が多く、骨髄進展例はなかった。小児例のレジストリを作成し、小児心臓移全例でEBV感染細胞の解析と日和見感染を起こすEBV以外のウイルスの検出を行っているので、その結果を発表する予定である。