[II-TRS04-6] 先天性心疾患の手術戦略:麻酔科医はどう手術のマネジメントをする
Keywords:経食道心エコー, 術中診断, 体外循環
麻酔科医として先天性心疾患の心臓外科手術に携わるには、疾患に対する一般的な治療戦略としての外科治療の適応や術後続発症/問題点について理解する必要がある。その上で個々の症例で予測される結果や予後を見据えて設定した目標がどこにあるのか?治療チームの一員として理解して手術に臨むことが求められる。我々麻酔科医は近年、経食道心エコー(TEE)を術中モニタリングとしてルーチンに使用している。TEEの役割・目的は術中診断・遺残異常検出に加え、術中の心室機能やサイズの監視を行い、血管内容量や心血管作動薬を適切に調整し循環管理に活かすことである。成人後天性心疾患では弁手術の追加/回避の最終決定方針にTEEが利用されるためTEE所見に基づく術中方針転換は多い(7-25%)が、小児心臓手術ではこれに比べて低い(2-7%)。一方で、稀ではあるが、根治術の回避あるいは二室性修復からフォンタン手術への変更など大きな方針転換が報告されている。さらに稀だが、体外循環離脱後に予期せぬ病変を診断することもあり、手術方針の確認/決定には必須といって過言でない。加えて、体外循環中の心室膨満/空気などの監視にも極めて有用で、外科医/体外循環技師と情報を共有することで安全な体外循環の確立及び維持を可能にする不可欠なツールとして認識されている。多くの麻酔科医は、術中診断・遺残異常評価は小児循環器科医に任せ、自らは心機能の監視のみに利用している。しかし、術中の循環動態は非麻酔下の循環とは異なり、特に体外循環離脱後には出血、手術操作や心血管作動薬使用など様々な要因によって修飾されるため、評価の度にしばしば心負荷条件が異なる。麻酔科医はこれらを念頭に置いて循環管理を行うとともに、自らも診断・評価に積極的に参加することが望ましいと考えられる。本シンポジウムでは、麻酔科医として先天性心疾患治療に貢献できる役割について示したい。