第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望セッション

総動脈幹症

会長要望セッション03(II-YB03)
総動脈幹症に対する内科的・外科的治療戦略

2020年11月23日(月) 16:00 〜 18:00 Track4

座長:中野 俊秀(福岡市立こども病院 心臓血管外科)
座長:黒嵜 健一(国立循環器病研究センター 小児循環器内科部)

[II-YB03-8] 本邦における総動脈幹症治療戦略傾向と成績ーJCVSDデータベースからの検討よりー

太田 教隆1, 立森 久照2, 平田 康隆4, 鈴木 孝明3, 打田 俊司1, 杉浦 純也1, 小嶋 愛1, 坂本 裕司1, 檜垣 高司5, 泉谷 裕則1, 高本 眞一6 (1.愛媛大学大学院医学系研究科 心臓血管呼吸器外科, 2.東京大学医療品質評価学講座, 3.埼玉医科大学国際医療センター小児心臓外科, 4.東京大学医学部心臓血管外科, 5.愛媛大学大学院医学系研究科 小児科, 6.日本心臓血管外科データベース)

キーワード:総動脈管症, 肺動脈絞扼術, 段階的手術

【はじめに】総動脈幹症(TAC)は比較的稀な疾患で出生児より治療を要する。外科的治療としてPrimary repair(P群)がWorld standardではあるが、本邦では両側肺動脈絞扼術(bPAB)を先行させたStaged Repair(S群)が幅広く行われている。JCVSD databaseより治療戦略傾向とその成績を示し、検討を加える。
【方法・対象】NCD(JCVSD)(2008-2018)に登録され解析可能なTruncus arteriosus(TAC)全 287例。Operative mortality(OM)[30days mortality(Y) or discharge mortality(Y)]、Post-OP adverse event(AE)[Post OP ECMO or CPR]に対するRisk factorを解析する。尚、施設規模は年間小児開心術数に応じて分類した。
【結果】P群24%(68/287), S群:76%(219/287) であり、S群内訳は、bil-PABを経て根治術に到達したStaged Complete (SC)群(n=163)と観察期間中根治未到達なStaged Waiting (SW)群(n=56)である。IAA合併13%(n=38)、Truncal valve anomaly は10%(n=28)。94%(32/34)のpremature baby、81%(29/36)のIAA合併症例でStaged strategyを選択。各群(P, SC, SW)の手術時年齢(median)(14,245,6)(days)、体重(3.0, 6.0, 2.7)(kg)。OM(P vs S[SC+SW])=(16.2%:11/68 vs 11.9%:26/219)(p=0.4)であった。 また根治術(n=231)に対するOM (P vs S)=(16.2%:11/68 vs 6.7%:11/163) (p=0.046)。staged群inter-stage mortality OM(SW)=26.8%(15/56)。多変量リスク解析にて、OMに対してrepeat PAB(p=0.04)、術前因子(shock, CPR等)(p<0.0001)、術前Catecholamine投与(p=0.04)が、AEに対して、未熟児(P=0.01)、low volume center (<25% per tile)(p<0.0001)が危険因子であった。
【結語】本邦TAC70%以上にstaged repairが選択されている。治療成績には合併疾患より患者術前状態に大きく影響を受ける。術後経過には術前状態に加え施設経験の影響も示唆された。成績向上に向け改善の余地はあり更なる飛躍を期待したい。