[III-PD08-3] 調律破綻
Keywords:Fontan, 上室性頻拍, 洞機能不全
Fontan術後は、心房肺動脈吻合型 (AP)のみならず、心外導管型 (ECC), lateral tunnel型 (LT)でも、術後経過年数とともに、上室性頻拍、洞機能不全の発生率が増加する。 調律破綻がFontan循環にどのような影響を及ぼすか。不整脈発生後のFontan failure累積回避率をみた報告では、頻拍発症後10年で43%, 徐脈発症後10年で59%であった (Cardins T, et al. J Thorac Cardiovasc Surg 2016; 152: 1355-1363)。血行動態悪化が調律破綻を引き起こすのか、調律破綻が血行動態悪化を招くのか不明であるが、調律破綻と血行動態が密接に関与していることが示唆される。 では、Fontanにおける調律破綻をいかに防ぐのか。まず、心房負荷をできるだけ減らす、narrow QRS・よりよい心機能を維持する。そして上室性頻拍の既往や副伝導路が存在する場合には、できるかぎり不整脈基質を術前に除去する。 しかし、実際は調律破綻を完全に抑制することは困難で、調律破綻が出現した際には速やかに治療をおこなう。Fontan循環においても、まず、解剖・血行動態を評価し状態を理解した上で、可能な限り血行動態を改善させる努力をする。それとともに抗不整脈薬・カテーテルアブレーション・デイバス植込みの3つを駆使して治療する。抗不整脈薬では、陰性変力作用の強い薬剤は避け、陰性変力作用の少ない薬剤、心筋保護作用のある薬剤を選択する。カテーテルアブレーションで完全に頻脈をコントロールするのは困難であるが、臨床像の改善には効果的である。デバイス植込みに際してはPMの設定、特にlower rateとatrioventricular intervalの設定はFontan循環には重要である。QRS幅増大例には早期に心臓再同期療法を導入する。 TCPCにおいても調律破綻がおこりうることを認識し、よりよいFontan循環維持のため、up stream治療を心がける必要がある。