[OR07-1] 経皮的心房中隔欠損閉鎖術の適応拡大における血行動態的考察
キーワード:心房中隔欠損症, カテーテル治療, ナトリウム利尿ペプチド
背景:心房中隔欠損症に対するカテーテル治療が本邦でも普及し、外科手術と比較した住み分けが明らかとなってきた一方、海外ほどの普及には至っていない。その背景には外科治療が安全・安価でできる本邦独自の事情が関与していると考えられ、更に普及が進むためにはそれぞれの治療の血行動態への影響を熟知する必要があるが、適切な血行動態指標は明らかでない。方法:心房・心室への客観的負荷指標であるナトリウム利尿ペプチド (HANP、BNP)の治療前後のトレンドを血行動態指標と合わせて解析した。結果:ASD160例を対象とした。BNPは左室容積 (LVEDV)、左室駆出率 (EF)、右室容積(RVEDV)、右室駆出率(RVEF)、平均肺動脈圧 (mPAp)、体血流係数(Qs)、肺血流係数 (Qp)、体血管抵抗 (Rs)、肺血管抵抗 (Rp)のいずれとも関連しなかったが、HANPはLVEDV、RVEF、Qs以外のすべての項目と相関を示した(p<0.05)。またHANP、BNPともQp/Qsと相関したが、BNP (p=0.0041, R2=0.29)と比較しHANP(p<0.0001, R2=0.54)は極めて強い関連を示した。カテーテル治療症例 (N=72)と外科治療(N=88)を比較すると、カテーテル治療症例は治療前HANP値が低く (26±12 vs 78±48, p= 0.0002)、重症例が外科手術対象となっていた。興味深いことに、治療前後のHANP値の変化ではカテーテル治療後 (28±12→45±25, p=0.017)にはHANPが上昇しているのに対して、外科治療後 (84±48→50±29, p=0.016)には顕著に低下しており、術後心膜切開後症候群の発症はHANP値の低下が強い症例に認めた。結論:心房中隔欠損症の重症度評価にはHANPが極めて有用である。HANPはカテーテル治療後に外科治療と全く異なる反応を示し、著明に上昇する。近年、HANP上昇の心不全増悪予防への重要性が示唆されており、重症例への適応拡大が血行動態的に適正かどうかは慎重に判断していく必要がある。