[OR10-3] 先天性心疾患周術期接合部頻拍のリスク因子
Keywords:接合部頻拍, 周術期, リスク因子
【背景】先天性心疾患周術期接合部頻拍は時に致死性の経過を示すが、そのリスクファクターに関するデータは乏しい。【目的】先天性心疾患周術期接合部頻拍のリスク因子を明らかにすること。【方法】2016から2019年に当院で先天性心疾患手術を施行した患者316人、手術数474回を対象とし、周術期(手術から1週間以内)に接合部頻拍のリスク因子として年齢、体重、診断、大動脈クランプ時間、体外循環時間、強心薬・デクスメデトミジン使用数・用量、先天性心疾患手術の死亡リスク分類であるSTAT (The Society of Thoracic Surgeons-European Association for Cardio-Thoracic Surgery) スコア、乳酸値等の関連を検討した。【結果】474の手術のうち、42(8.9%)例で周術期に接合部頻拍を生じた。多因子解析で独立したリスク因子であったのは、内臓錯位症候群(オッズ比 4.5:95%信頼区間:1.2-15.8)、大動脈クランプ時間(オッズ比 1.4: 95%信頼区間:1.1-2.1)、ならびに3種類以上の強心薬使用(オッズ比2.2:95%信頼区間 1.1-4.9)であった。接合部頻拍治療への薬物治療は13/42例(31%)に施行されており、ランジオロールが9例で最多であった。1例では接合部頻拍中の血行動態破綻のため、開胸処置を要していた。【結論】先天性心疾患周術期には約10%程度で接合部頻拍を生じ、リスク因子としては内臓錯位症候群、大動脈クランプ時間、3種類以上の強心薬使用がそのリスク因子であった。ランジオロールは周術期接合部頻拍に対して概ね効果的であったが、時に開胸術を要することもありリスク因子への意識は重要である。