[OR11-5] 動脈管依存性先天性心疾患におけるミルリノンを併用した動脈管の管理
Keywords:動脈管, PGE1, ミルリノン
【はじめに】動脈管依存性先天性心疾患の治療において、動脈管を維持する目的でプロスタグランジン製剤(PGE1)を使用することが一般的だが、経過中に動脈管が縮小するとPGE1の増量が必要となり、高用量を要することも少なくない。我々は動脈管の維持においてミルリノンの併用が有効であった5例を経験したので報告する。【症例】動脈管依存性体循環が3例(大動脈弓離断+心室中隔欠損2例、大動脈縮窄+心室中隔欠損1例)、動脈管依存性肺循環が2例(純型肺動脈閉鎖1例、右室型単心室+肺動脈閉鎖1例)。5例中4例は胎児診断例。出生時の在胎週数は37.4(36.6-39.7)週、出生体重は2386(1948-3228)g。動脈管依存性体循環の3例はいずれも姑息術として両側肺動脈絞扼術を施行後であり、動脈管依存性肺循環の2例は短絡手術前だった。全例Lipo PGE1投与からPGE1-CDに変更しており、PGE1の増量を要したのは日齢20(6-68)、PGE1-CDの最大投与量は23(6-70)ng/kg/min、PGE1投与期間は71(31-147)日間だった。5例中2例はミルリノンの中止または減量により動脈管が縮小し、再開または増量により拡大した。5例中3例はPGE1を増量しても効果不十分であったが、ミルリノン併用により動脈管の拡大がみられた。なお5例中1例は呼吸抑制の副作用のためPGE1増量を控えミルリノンを併用した。ミルリノンの投与量は0.3(0.2-0.5)γであり、併用によりPGE1-CDの投与量は最終的に9(3-26)ng/kg/minに減量できた。またPGE1による副作用としての呼吸抑制に対して無水カフェインやHFNCを使用した症例において中止できた例もあった。なおミルリノン投与による明らかな有害事象はなかった。【考察】ミルリノンは急性心不全治療薬として小児循環器領域で用いることの多いPDE3阻害薬だが、動脈管依存性先天性心疾患の管理において、症例によってはPGE1との併用によりPGE1投与量の減量ひいては副作用の軽減が期待でき、より安全に心臓外科手術に到達できると考える。