[OR12-4] 予期せぬ呼吸循環不全に対してPCPSを導入した症例の適応と問題点
Keywords:体外循環, CPA, PCPS
【背景】予期せぬ呼吸循環不全に対し,Percutaneous Cardiopulmonary Support (PCPS)は有効な救命手段であり,当院でも小児導入例が増加している.一方で離脱後に低酸素性脳症や合併症を呈する症例もあり,その適応や導入前後の管理は重要な課題である.【目的】当院での導入症例の適応・合併症を後方視的に検討する.【対象】2015年1月から2019年12月までの5年間で,当院で経験した呼吸不全・心不全・CPAに対してPCPSを装着した症例を対象とし,心臓手術前後・新生児症例は除外した.【結果】症例は5例で,年齢6-12歳 (中央値11歳),体重12-30kg(中央値21kg),診断は心筋炎3例・溺水2例であった.心停止前の装着は1例,ROSC後が3例,CPR中の装着が1例であった.いずれも同側の大腿動静脈からカニュレーションし,脱血が18-21Fr,送血が13.5-15Frであった.PCPS適応判断から装着までの時間は30-229分(中央値89分),装着期間は40-109時間(中央値72時間)であった.装着前に明らかな神経学的異常所見を認めなかった3症例は,全例元のADLレベルに改善した.他の2例は30分-1時間のCPRを要し瞳孔散大を認めておりPCPS導入後,ともに広範囲の低酸素脳症が確認された.のち1例は死亡,1例は脳死と診断され得る状態に至った.PCPSに伴う合併症は下肢の血管狭窄・閉塞2例,仮性動脈瘤1例,コンパートメント症候群1例で,その他の合併症は認めなかった.【考察】当院では常駐する小児循環器医・小児心臓血管外科医・救急医により迅速に導入が行われていた.カニューレサイズバリエーションを増やし,分枝送血・混合血酸素飽和度モニタリングを行うことで下肢血管合併症・運動障害予防に対応している.重篤な中枢神経合併症下では,救命出来た場合でもその予後は厳しい.装着前に十分な評価を行う時間的猶予が無い場合や,家族の希望などで装着に至る場合があり,PCPS装着判断の実際的な指針が求められる.