第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

周産期・心疾患合併妊婦

デジタルオーラル(I)19(OR19)
周産期・心疾患合併妊婦

指定討論者:石戸 美妃子(東京女子医科大学 循環器小児科)
指定討論者:畑崎 喜芳(富山県立中央病院 小児科)

[OR19-2] 高肺血流型先天性心疾患を合併した極低出生体重児の手術時期による検討

山田 浩之, 中尾 厚, 土屋 恵司 (日本赤十字社医療センター 新生児科)

キーワード:先天性心疾患, 極低出生体重児, 肺高血圧

【目的】高肺血流型の先天性心疾患(CHD)は、早期に手術が必要なことがあるが、極低出生体重児(VLBWI)では、その未熟性ゆえに手術リスクは高く、手術時期に関する確立された見解はない。高肺血流型のCHDを合併し手術を要したVLBWIについて検討する。【対象】2010年1月-2019年12月に当科に入院した40例を早期に初回手術を行ったE群25例(手術日齢3-64、中央値9、手術時体重413-1438g、中央値1199g)、体重の増加(≧1500g)を待ち初回手術を行ったD群15例(手術日齢72-930、中央値107、手術時体重1702-8075g、中央値2474g)にわけ後方視的に検討した。評価項目は死亡、周術期・遠隔期合併症とした。動脈管開存(PDA)のみの例は除外した。【結果】在胎週数、出生体重、性別、CHD内訳、染色体異常の有無に関して、両群間で統計学的な有意差は認めなかった。CHD内訳:心室中隔欠損(VSD)25例、両大血管右室起始4例、大動脈縮窄複合3例、左心低形成症候群3例、大動脈肺動脈窓2例、総動脈幹症1例、総肺静脈還流異常(TAPVC)1例、心房中隔欠損(ASD)1例。染色体異常は20例 。手術内訳E群:肺動脈絞扼(PAB)10例、両側PAB7例、PDA結紮7例、大動脈縮窄修復+PAB1例。D群: PAB7例、両側PAB1例、VSD閉鎖4例、ASD閉鎖2例、TAPVC修復1例。初回手術に関連した周術期死亡は認めなかったが、最終的に10例死亡(E群8例、D群2例)、重篤な染色体異常の例を除くと2例死亡(E群1例、D群1例)。いずれの場合でも両群間で統計学的に有意差は認めなかった。合併症に関しては壊死性腸炎2例(E群1例、D群1例)。術後に肺高血圧(PH)を認めた例は7例(E群なし、D群7例、p<0.01)で有意差を認めた。超低出生体重児(ELBWI)とVLBWIで比較するとELBWI群でPHを認めた例が多かった(OR11.2、95%CI:1.7-70.8)。【考察】高肺血流型のCHDを合併したVLBWI(特にELBWI)では、術後PHが残存することがあり、長期的予後を考慮するとより早期に肺血流を制限する治療が必要と考える。