[OR30-2] 孤立性総肺静脈還流異常症に対する外科治療の遠隔成績および術後肺静脈閉塞・遠隔死亡の予測因子
Keywords:総肺静脈還流異常症, 外科治療遠隔成績, 肺静脈閉塞
【背景】孤立性総肺静脈還流異常症(以下TAPVC)は近年良好な遠隔成績が報告されているが,未だに肺静脈閉塞(PVO)などで治療に苦慮する症例を経験する.【目的】当院のTAPVCに対する外科治療遠隔成績を報告し,術後遠隔死亡・術後PVOのリスク因子について検討する.【方法】1995-2019年に当院で施行したTAPVC修復術43例のうち観察期間が5年以上経過したTAPVC 27例を対象に後方視的に検討した.PV velocity(PVv)>2.0m/s:PVO,1.2m/s≦PVv≦2.0m/s or continuous pattern(+):PV stenosis(PVS)と定義した.【結果】出生時体重:2.8(IQR:2.6-3.2)kg,手術時体重:3.1(IQR:2.6-3.8)kg,手術時日齢:7(IQR:1-42)日.Darling分類Ia/Ib/IIa/IIb/III/IV:9/3/2/0/9/4例.初回修復は全例conventional repair.Superior approach 3例,cut back法4例,posterior approach 16例,Williams法3例,詳細不明1例.手術死亡:1例(3.7%,ECMOによる脳出血).観察期間中央値13.0(IQR:6.7-15.8)年で手術死亡を除いた生存率は92.3%(24/26),死亡2例はともに術後半年以内かつ術後PVOで再手術(+).術後再手術はPVO:3例(11.1%),Williams法術後の上大静脈狭窄・洞不全症候群:1例(3.7%).術前PVO(+)は術後PVOのリスク因子(Log-rank<0.01),術後PVO再手術(+)は術後遠隔死亡のリスク因子(Log-rank<0.01)であった.術後PVSに関しては,Darling分類III/IV群と術前PVO(+)群でそれぞれRisk ratio(RR) 4.67(95%CI[0.6-36.3])・Fisher P=0.148,Risk ratio(RR) 4.75(95%CI[1.02-22.1])・Fisher P=0.0698とどちらも統計学的有意差はないがRRが高い傾向を認めた.【結論】当院におけるTAPVCの外科治療遠隔成績は良好.術前PVO(+)は術後PVOのリスク因子であり,術後PVOによる再手術は遠隔死亡のリスク因子であった.術前PVO(+)とDarling分類III/IVは術後PVSに対するRRが高く,それらの症例では術後PVOを念頭におきより厳密なfollow upが必要である.