第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療遠隔成績

デジタルオーラル(I)30(OR30)
外科治療遠隔成績

指定討論者:村山 弘臣(あいち小児保健医療総合センター)
指定討論者:盤井 成光(大阪母子医療センター 心臓血管外科)

[OR30-4] 先天性心疾患修復術後の右側房室弁逆流に対する弁形成術の有用性

竹下 斉史, 水野 友裕, 大井 啓司, 八島 正文, 長岡 英気, 藤原 立樹, 大石 清寿, 奥村 裕士, 崔 容俊, 荒井 裕国 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)

キーワード:三尖弁逆流, 成人先天性心疾患, 再手術

【背景】
CHD根治術後の右側房室弁逆流(RAVVR)は形態異常や右心負荷によるだけでなく, 前回手術の影響やAf, Pacing leadの影響など多様な機序で発生するため, 弁輪縫縮のみでは逆流の制御が不十分となることが危惧される.
【対象と方法】
2006年1月から2019年12月に当院で施行されたCHD二心室修復術後の成人期再手術症例16例のうちRAVVへ介入した10例において逆流の機序, 術式, 術後成績を検討した.
【結果】
原疾患の内訳はiAVSD 3例, TOF 3例, ASD 2例, VSD 1例, 先天性AS 1例. 再手術施行時の年齢は46.5±20.9歳で根治術後29.9±7.8年経過していた. 再手術介入の主要因は左側房室弁病変が4例, AR 1例, PS/PR 2例, 遺残短絡 1例, Pacing lead感染 1例でRAVV病変が主因となったのは1例のみ. NYHA分類は2.2±0.6度. 術前TTEのRAVVR gradeは2.3±1.4度, 狭窄合併症例は1例. 推定右室収縮期圧(eRVSP)は55.1±16.4mmHg. Af合併例は6例.
RAVV手術以外の併施手術は左側房室弁手術 5例, 右室流出路再建 4例, 大動脈弁手術 1例, 遺残短絡閉鎖 3例, Pacing lead抜去 2例, CABG 1例(重複あり).
RAVVに対する術式は, 狭窄合併例1例で弁置換, その他9例は弁形成術を施行. 逆流の成因は弁輪拡大 8例, 形態異常 3例, 中隔尖の心室中隔への癒着が4例, Pacing leadによる弁尖の可動域制限が2例であった(重複あり). 弁形成術を施行した9例のうち7例で人工弁輪を使用し, 弁尖手技としてCommissural plication (4例), Edge-to-edge plication (3例), Cleft閉鎖 1例, Leaflet augmentation (1例)を施行.
術後TTEでRAVVR 0.7±0.5度(p=0.013), eRVSP 32.6±13.6mmHg(p=0.002)といずれも有意な改善を認めた. 平均観察期間49.7ヶ月において1例(生体弁PVR施行後)でeRVSPの上昇に伴う2度(moderate)のRAVVR再発を認めたが, 死亡例なし.
【結語】
CHD根治術後の多様な機序のRAVVRに対し, その機序に応じた手技を施すことにより良好な成績を得ることができた.