The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

一般心臓病学

デジタルオーラル(II)03(P03)
一般心臓病学3

指定討論者:佐藤 智幸(自治医科大学 小児科学教室)

[P03-3] 小児循環器治療薬の開発戦略を考える

水上 愛弓 (国立国際医療研究センター 小児科)

Keywords:適応外使用, 治験推進, 医学薬学上の公知

小児用医薬品開発のなかでも循環器領域における小児適応の拡大は、対象疾患が希少疾患であり患者数の少ないこと、成人での適応取得後早期より適応外使用が始まり、実薬が投与されている状況下でプラセボ対照試験の実施が困難であること等から被験者組み入れに難渋し、治験が進まないことが問題視されている。製薬企業主導の臨床試験をスムーズに実施するために日本小児循環器学会による治験推進活動が開始されたところであるが、このような状況で小児循環器治療薬の適応拡大を効率よく進めるための戦略は、海外における小児適応の取得状況により大きく異なる。海外で既に小児適応を取得し、用法・用量が決まっている場合には、小児を対象として実施した海外臨床試験成績を利用し、日本人小児に対しても同様の有効性・安全性が示されることを一定規模の臨床試験において検証することが推奨される。既に広く適応外使用が始まっており、海外と同じ用法・用量での使用実態が示される場合には、医学薬学上の公知と判断し公知申請の可能性も検討できる。一方、海外でも小児適応がなく、用法・用量が定まっていない場合の適応拡大は困難を極める。国際共同治験に参加し、国内外同時開発としてエビデンスレベルの高い臨床試験成績を示すことが望ましいが、プラセボ対照ランダム化比較試験の実施が必要となる可能性があり、さらに一定数以上の日本人小児の参加が求められる。また、成人を対象とした臨床試験成績を利用し、モデリングとシミュレーションの手法により適切な小児の用法・用量を決定することは有用と考えられるが、その場合でも一定数の日本人小児患者において有効性・安全性を示す必要があることには留意するべきである。小児適応の拡大においては対象とする薬剤の国内外の状況から適切な開発戦略を選択することが重要であり、成人での開発段階から小児適応を見据えたロードマップを作成することも一案である。