[P07-4] 末梢性肺動脈狭窄症が自然軽快したELN遺伝子異常の姉弟例
キーワード:ELN遺伝子異常, 末梢肺動脈狭窄, 自然軽快例
【背景・目的】Williams症候群(WS)は大動脈弁上狭窄(supra AS),末梢性肺動脈狭窄(PPS)に,妖精様特異的顔貌と精神発達遅滞を合併する症候群で,染色体7q11.23領域の微細欠失が原因とされている.一方WSと同様の心血管病変を有するが心外病変を認めず,FISH法で染色体異常を認めない症例の報告がある.このような症例において遺伝子検査でELN遺伝子異常を認め,PPSの自然軽快を認めた姉弟例を経験したので報告する.【症例】<症例1>WS特異的顔貌や精神発達遅滞のない3歳女児.日齢1に心雑音を聴取し,エコーにてsupra AS, PPSを認めた.月齢6に心臓カテーテル検査を施行.右肺動脈35mmHg, 左肺動脈65mmHgの圧較差を認めたが,全体的に低形成な形態であり,経皮的肺動脈形成術の効果は望めないと判断した.supra ASの圧較差は10mmHgであった.1歳6カ月時に再度カテーテル検査を施行.右肺動脈38mmHg, 左肺動脈35mmHgと圧較差は改善傾向にあり,supra ASの圧較差は消失していた.以降エコー上PPSは徐々に改善傾向にある.<症例2>症例1の弟であり,WS特異的顔貌や精神発達遅滞のない1歳男児.生後3週の健診で心雑音を聴取し,エコーにて肺動脈弁性狭窄43mmHg,右肺動脈44mmHg, 左肺動脈56mmHgの推定圧較差を認めた.1歳時にカテーテル検査を施行.右肺動脈12mmHg, 左肺動脈8mmHgと圧較差の改善を認めた.遺伝子検査を施行し,ELN遺伝子異常が同定された.【まとめ】WSに特徴的な顔貌や精神発達遅滞がなく,心血管病変のみを認め,弟からELN遺伝子異常が同定された症例を経験した(姉は家族の希望がなく遺伝子検査未実施).両親,弟のSanger Sequenceにより母体由来の変異であることを確認した.ELN遺伝子異常によるPPSは自然軽快する可能性がある.心外病変の陰性所見からWSを積極的に疑わない症例において,ELN遺伝子異常を調べることで,PPSの予後を類推できる可能性がある.