The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

染色体異常・遺伝子異常

デジタルオーラル(II)08(P08)
染色体異常・遺伝子異常3

指定討論者:前野 泰樹(聖マリア病院)

[P08-1] 先天性心疾患を合併したDown症候群児における周術期急性腎障害と予後

下園 翼, 上野 健太郎, 塩川 直宏, 高橋 宜宏, 中江 広治, 川村 順平, 森田 康子, 二宮 由美子 (鹿児島大学小児診療センター小児科)

Keywords:Down症候群, 急性腎障害, 先天性心疾患

【背景】先天性心疾患(CHD)児は心臓術後に高頻度に急性腎障害(acute kidney injury:AKI)を合併し、生命予後に関連すると報告されている。Down症候群(DS)児は、しばしば低形成腎や腎尿路奇形を合併し潜在的腎機能障害を有すると考えられているが、CHD合併DS児における周術期AKIおよび生命予後との関連については、明らかにされていない。【目的】CHD合併DS児における周術期AKIと予後について検討する。【方法】乳児期に二心室修復術を要したCHD患者連続176例(DS群71例、非DS群105例)を対象とした。理学所見、診断、合併症(肺高血圧症、呼吸器・消化器・腎泌尿器・血液腫瘍)、周術期因子(手術時月齢、人工心肺時間、循環作動薬投与量(Vasoactive-Inotropic Score:VIS))とAKIの発症・重症度を評価し、予後との関連について解析した。【結果】DS群は全例標準型21トリソミーで、VSD 42例(59.2%)、AVSD 10例(14.1%)、Fallot四徴症 8例(11.3%)であった。DS群と非DS群では理学所見に差はないが、腎臓最長径(cm)が小さく(3.8±0.2 vs 4.2±0.1, P<0.001)、術前Cr値(mg/dl)は高値であった(0.32±0.10 vs 0.26±0.10, P<0.001)。AKI発症はDS群46例(64.8%)、非DS群73例(69.5%)で、重症例(KDIGO 3)はDS群7例(9.9%)、非DS群16例(15.2%)であった。DS群での術前eGFRとAKI発症に関連性はなくDS群におけるAKI発症の危険因子はVIS高値(OR 1.2, p=0.003)であった。術後遠隔期死亡はDS群6例(8.5%)、非DS群0例で、DS群予後不良因子はVIS高値(OR 1.3, p=0.012)と呼吸器合併症(OR 16.2, p=0.022)であった。【考案】DS児では形態的低形成腎が多いが、CHD合併DS児の多くは周術期因子を除けば、適切な術後の水分管理でAKI発症を予防できると考えられた。【結語】CHD合併DS児では非DS児と比較し形態的低形成腎が多いが、周術期AKIの発症・重症度に差はなく、予後との関係性は見出だせなかった。