[P10-5] 母体抗SS-A抗体による胎児心筋障害の評価におけるDual-gate Doppler法の有用性
キーワード:胎児心機能, 母体抗SS-A抗体, dual-gate Doppler法
【背景】母体抗SSA抗体による胎児心合併症として完全房室ブロックと心筋障害が知られているが、完全房室ブロックのない心筋障害の経過については不明点が多い。【目的】dual-gate Dopplerを使用して胎児期の経時的な心機能の変化について調査した。【方法】単施設後方視的データ解析を行った。当院に2017年から2019年の3年間に紹介された抗SSA抗体陽性の母体について、胎児心エコー外来での経時的な房室伝導時間の計測時に心機能評価を行なった。通常のDoppler法、組織Doppler法、およびMモード法の他、dual-gate Doppler法による、Tei index, 等容収縮時間(ICT)、等容拡張時間(IRT)を計測した。【結果】在胎17―36週に紹介された22例を対象とした。このうち15例は24週以前から観察できた。完全房室ブロックを発症した症例はなかった。22例中1例で、在胎23週からdual-gate Doppler法にて計測した右心室Tei indexが胎児期の正常基準である0.55を上回り出生時まで継続した。左心室では在胎32と33週で一過性の上昇を認めたが、以後正常域に改善した。Tei index 上昇時には、ICTとIRTの双方が延長しており、収縮能と拡張能、双方の障害が示唆された。これらのdual-gate Doppler法の異常値は、他の検査方法異常値が出現する前に見られた。【結語】限られた症例での評価であるが、抗SSA抗体による心筋障害では収縮能拡張能双方の障害が示唆された。また、これらの評価にdual-gate Doppler法による計測が有用であった。