第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

複雑心奇形

デジタルオーラル(II)13(P13)
複雑心奇形3

指定討論者:北野 正尚(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児循環器内科)

[P13-2] 自作立体心臓模型が治療戦略決定に有用であった左側大動脈弓離断B型と右側大動脈縮窄を合併した重複大動脈弓の1例

鈴木 峻1, 古賀 玲奈1, 古井 貞浩1, 横溝 亜希子1, 関 満1, 佐藤 智幸1, 片岡 功一1,2, 鵜垣 伸也3, 吉積 功3, 河田 政明3, 山形 崇倫1 (1.自治医科大学とちぎこども医療センター 小児科, 2.自治医科大学とちぎこども医療センター 小児手術・集中治療部, 3.自治医科大学とちぎこども医療センター 小児先天性心臓血管外科)

キーワード:重複大動脈弓, 大動脈弓離断, 立体心臓模型

【はじめに】先天性心疾患では各種画像診断を用いて術式決定を行うが、複雑な心血管奇形においては治療方針決定に難渋することがある。極めて稀な複合先天性心疾患症例に対し,自施設で作製した立体心臓模型を基に手術を立案し,治療戦略を決定したので報告する。【症例】在胎36週2日、出生体重2150gの女児。日齢1に心雑音を指摘され、スクリーニングの心エコーでsmall VSD、ASDと診断された。哺乳良好で経過したが、日齢7に哺乳不良が出現、心エコーの再検と造影CT検査により左側大動脈弓離断B型と右側大動脈縮窄を合併した重複大動脈弓、PDA、small VSD, ASDと診断した。下行大動脈の血流は、右側大動脈弓では縮窄部を経て上行大動脈から、左側大動脈弓では動脈管を介して肺動脈から供給され動脈管依存性循環と判断したが、PDAは閉鎖傾向なくPGE1を投与せず経過観察した。複雑な血管形態・血行動態のため患者CTデータからABS樹脂製立体心臓模型を自施設で作製して治療方針を検討した。細く蛇行した右側大動脈の活用は困難で左側大動脈弓の再建術が必要と考えられたが、上行大動脈と左側下行大動脈間の距離が長く、retroaortic innominate veinが存在し、低体重児であることから体重増加を図った後に手術を行う方針とした。生後1か月頃から上肢高血圧と心筋肥大が出現し、ACE-Iやβ-blockerを内服したが進行した。PDAも閉鎖傾向がみられ、日齢55、体重2856gで左側大動脈弓再建術とASD閉鎖術を行った。術後20日の造影CT検査では、左大動脈弓再建部の狭窄はなく、右大動脈縮窄部は自然閉鎖していた。生後4か月現在、高血圧や血圧の上下肢差はなく経過良好である。【まとめ】既報告のない左側大動脈弓離断と右側大動脈縮窄を合併した重複大動脈弓の1例を経験した。立体心臓模型では手にとり様々な角度から心血管構造や位置関係を把握できるため,稀で複雑な形態を有する心疾患の治療戦略決定において極めて有用である。