[P19-3] 新しく開発した紫外線硬化式インクジェット3Dプリンターを用いた心臓レプリカによる希少剖検心臓のアーカイブ化の試み
Keywords:3D printing, autopsied heart, archive
[背景]先天性心疾患の解剖学的診断および外科手術には、心臓大血管の複雑な立体構造の正確な理解が不可欠である。この点において過去の剖検心臓標本は貴重な教材として長年にわたり重要な役割を果たしてきた。しかし繰り返し教材として使用されることで、近年劣化が免れない状況にある。今回、これまで我々が培ってきた心臓レプリカ作成技術の第2世代となるウェットタイプの心臓レプリカを用いて、過去の希少剖検心臓標本のアーカイブ化の試みを行った。[対象と方法]対象は東京女子医科大学が保管する剖検心9例。診断は、straddling MVを伴うDORV2例、Taussig-Bing型DORV1例、TGA with PS1例、完全型AVSD1例、不完全型AVSD1例、TOF1例、VSD1例、ASD1例である。年齢は生後10ヶ月から30歳。工業用CT(METROTOM 800)で3次元画像を撮影した後、STL画像処理を行い、必要に応じて医師が補完補正した後、紫外線硬化式インクジェット3Dプリンタを用いて造形した。研究は東京女子医科大学倫理審査の承認により実施した。[結果]乳児から成人症例に至るまで、診断に必要な解剖学的構造は良好に再現された。レプリカは親水性のアクリル樹脂から成り、心臓に近い触感を伴い、切開と縫合が可能であった。乳頭筋および心室の肉柱は正確に再現された。弁尖や腱索は年長児以降では再現可能であったが、乳児例では薄く細かい組織をすべて再現することはできなかった。[結論] 今後も撮影方法、画像処理方法、3Dプリンティング技術において改善の必要があるものの、新たに開発した紫外線硬化式インクジェット3Dプリンタを用いた心臓レプリカの作成は、貴重な剖検心のアーカイブ化に大きく役立ち、標本展示による劣化を回避するとともに、同時に多数造形することで、若手医師への教育材料として大きく発展する可能性が示唆された。(本研究は(株)クロスエフェクト、(株)SCREENホールディングス、(株)共栄社化学の協力を得た。)