[P31-1] 導出右側胸部誘導心電図を用いた肺高血圧症検出の有用性
Keywords:肺高血圧症, 標準12誘導心電図, 導出18誘導心電図
【背景】肺高血圧症(PH)は予後不良な疾患であるが、早期に診断し適切な治療介入を行えば生命予後を改善することが可能になっている。しかし、PHを診断する上で、標準12誘導心電図の右室肥大所見は感度・特異度ともに高くない。近年、標準12誘導心電図では捉えきれない右側誘導や背部誘導所見を、12誘導心電図波形から演算処理して導出する新技術が開発され、導出18誘導心電図として注目されている。この新技術から得られる右側胸部誘導(V3R-V5R)を用いて、PH検出の有用性について検討した。【方法】2013年以降に当科で心臓カテーテル検査を施行した学童期以上の患者の中から、PHと診断した17症例(うちシャント疾患9症例)をPH群、PHの無い106症例(川崎病21症例、動脈管開存15症例、心房中隔欠損61症例、その他9症例)を非PH群とした。カテーテル検査所見と、QRS電気軸やV1及び導出右側胸部誘導のR波高などの心電図所見との関連について比較・検討した。【結果】PH群の内訳は、年齢15歳(6-84)、平均肺動脈圧29mmHg(25-75)、肺血管抵抗2.9units×m2(1.1-22.3)であった。非PH群と比較してPH群の方がQRS電気軸は有意に右軸で、導出右側胸部誘導のR波高は有意に高かった。R波高は平均肺動脈圧や肺血管抵抗と有意に相関しており、導出右側胸部誘導の相関係数二乗値(平均肺動脈圧:0.28-0.37、肺血管抵抗:0.25-0.29)はV1誘導(平均肺動脈圧:0.18、肺血管抵抗:0.16)よりも高く、より良好な相関を示した。また、ROC分析において、V5R誘導のR波高341μVをカットオフとした際のAUCが最も高く(感度0.76、特異度0.79)、導出右側胸部誘導はV1誘導よりも高い感度・特異度を示した。【結語】PH検出に導出右側胸部誘導心電図は有用である。