The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

集中治療・周術期管理

デジタルオーラル(II)34(P34)
集中治療・周術期管理3

指定討論者:深江 宏治(熊本市立熊本市民病院 小児心臓外科)

[P34-1] 高肺血流心疾患における低酸素換気療法の有用性

山内 真由子, 土井 悠司, 上田 和利, 佐藤 一寿, 荻野 佳代, 林 知宏, 脇 研自, 新垣 義夫 (倉敷中央病院 小児科)

Keywords:nitrogen, pulmonary blood flow, hypoxia inhalation

【背景】窒素による低酸素換気療法は,肺血管抵抗を増加させることで体血流を増加させ,循環動態の安定化を図る内科的治療として高肺血流をきたす疾患群において使用される.【目的】新生児高肺血流心疾患における低酸素換気療法の急性期の循環動態を評価し,有用性を検討する.【対象】症例は6例,疾患は左心低形成2例,総動脈幹症1例,動脈管開存症2例,純型肺動脈閉鎖1例.【方法】当院で高肺血流による循環不全を呈し,窒素による低酸素換気療法を施行した症例について,窒素開始前後24時間のSpO2,尿量,血圧,乳酸値を後方視的に検討した.体血圧は収縮期血圧(sBP)に対する拡張期血圧(dBP)の比率(dBP/sBP)で評価した.低酸素換気療法は医療用窒素配管から窒素-空気ブレンダーを用いて酸素濃度を調節し,酸素濃度計での実測値をモニタリングしながら管理を行った.2例が経鼻カヌラ,4例が挿管下で行った.窒素吸入開始時の日齢は3(0~12),体重は2567(279~2908) g.【結果】低酸素換気療法開始前後で6例中全例で有意にSpO2低下(前:96(90~99)%、後:88(84~92)%)がみられた(P<0.05).dBP/sBPは,有意差はみられないものの,治療開始前0.54が開始後0.64と上昇傾向(P=0.07)が認められた.また,治療開始前は尿量=1.5(0.6~7.5) ml/kg/hr,乳酸値2.0(0.45~6.4) mmol/Lであったが,開始後は尿量=2.5(0.95~4.3) ml/kg/hr,乳酸値=1.2(0.8~2.3) mmol/Lと改善傾向を認めており,有意差はみられなかったものの,低酸素換気療法による体循環不全の改善が示唆された.全例その後の手術介入に到達出来ている.【結論】安全に使用するためのプロトコール確立や,中長期的な予後への影響など課題はあるものの,窒素を用いた低酸素換気療法は高肺血流による循環不全を改善させ得るため,手術までの内科的治療として有効である.