[P34-2] 高肺血流型先天性心疾患に対する窒素療法の実態 -窒素使用の有無での比較-
Keywords:新生児, 窒素療法, 周術期
【緒言】高肺血流型先天性心疾患の新生児術前管理において、窒素療法はスタンダードな治療法である。しかし、開始の適応/タイミングやその効果は定かではない。【目的・方法】窒素療法の実態と効果を明らかにする。過去4年間に当院で外科治療を行なったHLHS(variantを含む)、IAA/CoAの症例を抽出し、術前に窒素を使用した群(N群)と窒素非使用群(非N群)に分けて、後方視的検討を行なった。【結果】2015年1月-2019年12月に当院で治療を行なったHLHS、IAA/CoAは41症例。N群は23例(HLHS:13例、IAA/CoA:10例)、非N群は18例(HLHS:5例、IAA/CoA:13例)。窒素開始はその時の責任医師によって判断され、窒素開始日齢(median)は2 (0-12)。初回手術の日齢(median)はN群=day3(1-14)・非N群=day3.5(2-12) (NS)と両群間で有意差がなかった。N群の窒素開始前後のバイタル変化は平均HR:150 bpm→131 bpm(p<0.01)、平均呼吸数:57/min→30/min(p<0.01)と改善。しかし、窒素開始前後6時間の尿量は、2.0ml/kg/h→2.2 ml/kg/hと変化なし。窒素療法開始後も効果がなく、明らかに高肺血流が進行した症例(アシドーシス悪化)は6/23例(26%)。著明な肺血流増加症例も含まれていたがN群、非N群ともにNECの発症なし。術後挿管日数やICU滞在日数、死亡率にも有意差はなし。【結語】窒素療法により多くの症例で術前状態が改善し、安定した状態で手術に繋げることができた。手術時日齢に有意差はなく、また術後経過にも悪影響はなかった。窒素療法は有効な術前の安定化手段と認識した上で、適切な時期に外科的介入を行う必要がある。