[P36-4] 胎児期から多様な不整脈および高度心機能低下を呈し、ECMO導入して救命した1例
Keywords:胎児心室頻拍, 心筋炎, ECMO
【背景】胎児頻拍症は上室性頻拍、特に房室回帰性頻拍や心房粗動等が多く、心室頻拍は極めて稀である。胎児期に心室頻拍を急性発症し、出生後にECMO導入して救命した1例を経験したので報告する。
【症例】母SS-A抗体正常で順調な妊娠経過であったが、在胎38週3日に胎動が消失し、胎児エコーでVTおよび著明な心機能低下を認めたため全身麻酔下緊急帝王切開で出生した。出生時VFで電気的/薬物的除細動に反応せず、約50分後にECMO導入した。循環は安定したが、完全房室ブロックと、顕著な幅広QRSによる心室調律(HR 40-100)が持続した。心収縮は微弱であったが(EF<10%)、エコー上心筋異常はなかった。日齢3より接合部調律に移行、JETを呈するようになり、日齢4からランジオロールを開始し一時ペーシングとした。その後心機能はEF=60%まで回復し日齢8にECMO離脱、房室伝導も回復し日齢15にペーシング中止とした。経過中に小脳出血を生じたが明らかな後遺症なく、現在は正常心機能まで回復し、不整脈再発も見られていない。経過より心筋炎を疑ったが母児ともに原因ウイルスの検出はなかった。
【考察】出生直前から急性発症したVT/VF、高度心機能低下は広汎な心筋障害を反映していると考えられる。ECMO導入して循環を安定させたことで、QRS幅や心筋逸脱酵素の改善があり心筋障害の回復が示唆された。また完全房室ブロックからJETを発症しているが、両疾患ともに房室結節周囲の心筋障害を反映している。過去の報告からも同様の経過を呈する例があり、JETは房室結節周囲の部分的な障害により、同部位で心筋が自動能を亢進して発症すると考えられており、完全房室ブロックから正常洞調律への回復過程を反映していると考えられた。
【結語】胎児期に広汎な心筋障害を発症し、出生後にECMO導入して救命できた1例。経過中の多様な不整脈は心筋障害・伝導障害からの回復過程を反映していることが示唆された。
【症例】母SS-A抗体正常で順調な妊娠経過であったが、在胎38週3日に胎動が消失し、胎児エコーでVTおよび著明な心機能低下を認めたため全身麻酔下緊急帝王切開で出生した。出生時VFで電気的/薬物的除細動に反応せず、約50分後にECMO導入した。循環は安定したが、完全房室ブロックと、顕著な幅広QRSによる心室調律(HR 40-100)が持続した。心収縮は微弱であったが(EF<10%)、エコー上心筋異常はなかった。日齢3より接合部調律に移行、JETを呈するようになり、日齢4からランジオロールを開始し一時ペーシングとした。その後心機能はEF=60%まで回復し日齢8にECMO離脱、房室伝導も回復し日齢15にペーシング中止とした。経過中に小脳出血を生じたが明らかな後遺症なく、現在は正常心機能まで回復し、不整脈再発も見られていない。経過より心筋炎を疑ったが母児ともに原因ウイルスの検出はなかった。
【考察】出生直前から急性発症したVT/VF、高度心機能低下は広汎な心筋障害を反映していると考えられる。ECMO導入して循環を安定させたことで、QRS幅や心筋逸脱酵素の改善があり心筋障害の回復が示唆された。また完全房室ブロックからJETを発症しているが、両疾患ともに房室結節周囲の心筋障害を反映している。過去の報告からも同様の経過を呈する例があり、JETは房室結節周囲の部分的な障害により、同部位で心筋が自動能を亢進して発症すると考えられており、完全房室ブロックから正常洞調律への回復過程を反映していると考えられた。
【結語】胎児期に広汎な心筋障害を発症し、出生後にECMO導入して救命できた1例。経過中の多様な不整脈は心筋障害・伝導障害からの回復過程を反映していることが示唆された。